精神病、特に統合失調症は以前精神分裂病と日本では翻訳され、この言葉の漢字の意味からあらぬ差別・偏見・汚名を当事者は受けてきました。私が統合失調症(精神分裂病)を発病する少し前は、法律の文面に統合失調症は遺伝性精神病と謳われていました。現在ならば考えられないことでも40,50年前では、統合失調症は遺伝するものと考えられていました。また、映画やTVなどで統合失調症者が何をするか分からない、怖い存在だと啓発するような誤った捉え方をしてドラマの中へ登場していました。また、特に私には印象的だった、「ジキルとハイド」の2重人格など残忍な人として私自身も考えていました。精神の当事者は服薬・通院を守っていれば、怖い存在ではありませんし、反対に健全者の無理解な言動に当事者の方が健全者を怖がっていますし、傷つきます。精神の当事者は、社会の中でひっそり・大人しく過ごしています。まだまだ、当事者は、自ら自分の病気を告知して生きている人は少ないですが、少しずつ社会の中で精神の当事者として活躍している人達が社会に登場してきました。
私は、CIL(自立生活センター)下関で働いているのには理由があります。それは、CILが身体・知的・精神の障碍者たちの自立生活支援をすることと障碍者運動をしているからです。一人で障碍者運動することはどうしても限界があります。現在、日本には120くらいのCILがあります。これらのCILの中に精神の当事者職員は数える程しか存在していません。精神の当事者職員として長期的なスパンで仕事をしていき、尚且つ自分の体調を気遣いながら社会生活をするのは本人だけでなく、周囲・環境などの配慮も必要です。私は、自分自身がどのような可能性があり、どのような力を発揮できるか分かりませんが、職場の上司・同僚のサポートで精神の領域の当事者ならではの仕事ができればいいなと思います。また、私は下関に12年くらい住んでいますが、精神の当事者として下関保健所・稗田病院・地域生活支援センターひえだ・援護寮ヒエダ・福祉工場ひえだランドリー等で、様々なサポートを得て今の自分があります。こういった精神障碍者にとっての社会資源・人的資源により精神障碍者が病院を退院して地域社会で生活する人も増えています。
社会からこれまで精神障碍者は何をするか分からない・怖い存在と考えられ、保安処分として精神科病院に収容されていることが是とされてきましたが、精神保健福祉法(1995年)の施行から病院から地域社会へと精神障碍者の社会復帰がすすめられてきました。私はいいタイミングで援護寮ヒエダに入寮して病気や障碍の対処法、制度、自立生活のための生活技術の訓練、対人関係の習得、金銭管理、ドラッグ管理等を身につけて一人暮らしを始めました。仕事もCIL下関に採用されて、援護寮から1年間通勤もしました。私は万全の体制で地域社会生活(自立生活)の第一歩をスタートしました。下関に住んで様々な人達(医療・福祉従事者、当事者)が私の前を通り過ぎました。彼らとの交流をもてたことは後年非常に役に立ちました。また、「援護寮ヒエダ新聞」「精神障碍者自立生活マニュアル」「メンタルにゅーすヒエダ」の編集で私自身仕事に勉強に役立ちました。
皆さんとの情報の共有化としていつでも・どこでもインターネットに繋がったパソコンがあればホームページに「援護寮ヒエダ新聞」「メンタルにゅーすヒエダ」を見ることができます。これら精神のニュースレターをホームページにするのには1年間の時間を要しました。全く現在のコンピューターの使い方が分からない状態から自分で勉強して作り上げたものですからかなり苦労しました。
仕事では、上司・同僚に、プライベートでは精神の当事者の友人との交流・結婚と駆け巡るようなこの下関での12年間でした。私の53年間の人生で、下関でのこの12年間の仕事・生活は充実したものとなりました。もともと、私は健全なときから無口で無愛想で怖がられていましたが、その私が統合失調症になったことで尚更、怖がられました。私の外見と病気に因果関係はないと考えていましたが、たまたま私の容貌がマッチしてしまいました。まあ、私の容貌は私の責任外のことで両親と神様のお計らいでしょう。(笑)
私は、下関に住んでから様々な機会を利用して精神病の普及に努力してきました。自分で意識して精神病のニュースレターを作っていたのではなく、私の個人的な知的好奇心から始まったものです。ニュースレターの反響を糧に今日まで頑張ってきただけです。しかしながら、「援護寮ヒエダ新聞」から現在進行形の「メンタルにゅーすヒエダ」まで12年間という時の長さはある面では短さをも感じるものです。少しでも精神の下関の当事者達へのエンパワメントができればと始めた仕事でしたがこれからも続けていきます。
【編集後記】
私の個人的な知的好奇心で始まった「援護寮ヒエダ新聞」から「メンタルにゅーすヒエダ」のニュースレターが今日まで続いてきたのは、今も同じ知的好奇心を持って編集は続いています。精神当事者のブログはみることが多い皆さんも精神医療福祉の消費者として病気・医療・福祉・病気と障碍の対処法・病者としての気持ち・差別偏見汚名の当事者、私のものの見方等ニュースレターから始まったものが、今はメンタルにゅーすVol.116となりました。発行当初、20部からいまは80部、JILのメーリングその他にも、配付している他、ホームページにしていますのでどれくらいの人が見ているのか分かりません。熱心に「メンタルにゅーすヒエダ」を続けているのは、私の後に続く精神の当事者達が私が体験したもの勉強したものをまとめたホームページの中から皆さんが求めるものを探して、私のように辛く苦しい体験をしないで欲しい、そういった願いを込めてメンタルにゅーすを編集しています。地方の援護寮から始まったニュースレターがホームページになり精神の当事者達に利用されていることを考えると得もいわれぬ気持ちです。皆さんのお役に立てば幸いに存じます。
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