メンタルにゅーすヒエダ 精神当事者(SAM)が 困っている事 |
2013年 Vol.144 CIL(自立生活センター)下関発行 ピア・ハート下関(精神自助会) 編集 SAM Tel(083)-263-2687 FAX(083)-263-2688 E-mail s-cil@feel.ocn.ne.jp |
私が職場で困っている事があります。それは、声を大きくして電話で話すと皆が心配することです。黙って考え事をしていても、歩き回って考え事をしていても調子が悪いのではないかと同僚は心配します。これは、当事者(私)と周りの人達のジレンマです。それは、私が統合失調症であることから調子が悪いのではないかと同僚が私を心配してくれるので、私には有難いことですが辛いときがあります。まあ、精神病の人が大きい声を出したり、歩き回ったりしていると調子が悪いのではないかと考える事に間違いはありません。私は、皆に心配をかけないように、声を大きくしない・ゆっくり歩く・いつも穏やかに話す・イライラしないなど様々な事に仕事をしている職場では気を付けています。もともと私は声が大きいので、自分で注意していないと声が大きくなります。それと、私が統合失調症と知っている人は、はなからまるでまともに接してくれない健全者も居ます。それでも、私が興奮してくると穏やかに話を聴いてくれる上司のKやMには、いつもお世話になっています。コーディネーターのNやMなども10年来の同僚なので話を聴いてくれます。
ところで、私は立場を替えて私と上司・同僚、私と仲間の当事者、私と主治医・看護師さんであったならどうするだろうなと考えます。総じて気を付けていることは、私が感情を激したときは周りの人に対応しないようにしています。確かに、声が大きかったり、イライラしていると調子が悪いのかと私の周りの人は心配したり・避けたりする人もいます。そうすると、触らぬ神に祟りなし的に私を避ける人もいます。このようになると、私は興奮も声を大きくも出来ないし、感情の起伏もすべて抑えなければいけないのです。ただ、総じて7割以上はこういったことは、状態が悪いのだろうと自分で気付いて抑えるために頓服などを使い、気分を落ち着けます。また、職場では上司が見かねて話を聴いてくれる事もあります。同僚が声掛けをしてくれます。何とも、辛い病気に罹患したものです。信頼のおける上司や同僚、知人、仲間が居る事は当事者(私)にとって有難いことです。私の感情の高ぶりのクーリング・ダウンを周囲の人達が配慮してくれるからです。しかし、時々、自分の気分が上がっているのに気付かないときがあります。最終的には状態が悪いのに自分で気付き頓服を使うか、対処します。こう言うことは稀なことですが時々あります。たいていは自分で気付く事が多いです。ただ、状態が悪くなると、差別・偏見などで「何をするか分からない、怖い」と言って私を避ける人もいます。それはそれで、健全者・当事者の自己決定なので仕方がない事です。ただ、周りの人達は当事者との貴重な経験を逃したなと思います。案外、当事者も健全者を怖がっている人が居る事を当事者のお話で気付く人もいますよ。まあ、当事者も案外ナイーブで正直な人が多いことに気付かされます。
私の母は生前、よく周りの人から声をかけられて羨ましいと私は思っていました。私は、生まれ故郷の山陽小野田市ではあまり人から声を掛けられることはありませんでした。私は外見が見るからに怖そうなので、人に声を掛けられる事はめったにありませんでした。母のように声の掛け易い外見からにじみ出てくるフィーリングは人徳だと思います。私にとっては、自分自身に備わってないフィーリングなので私には、無縁なものですが何とも羨ましい事です。
こんな私でも毎日、規則正しい生活リズム・食事・睡眠、服薬を守っていれば何とか地域社会で生活が出来ております。当事者だから特別な生活をしている訳でないのは、皆さん自身の病気と障碍との共生でお分かりでしょう。私は、基本は調子が悪ければ無理はしません。まず、頓服を使います。そして、横になり身体を休ませます。次に、ウォークマンを聴きます。幻聴をウォークマンで遮断します。これで落ち着かなければ、早退します。それで治まらなければ、短縮就労、時間差就労、休暇を2週間くらいとる。ここ2,3年、私は、頓服、短縮就労とウォークマンで何とか病気と障碍に対処しています。
今、私は自分の病気と障碍を何とかなだめて地域社会生活や仕事をしています。自分自身をなだめて生活することが何とも難しいものかと思います。調子の上がったときは抑えて、調子の下がったときは焦らず・頑張らず・無理をしない、また、自分の体調に合わせて仕事をする事も通院する事も私の仕事と考えています。そう考えると自分を冷静に割り切って自己管理が出来ています。今はなんにしても、自分の状態が上がっているので、はやり立つ気分を抑える事が大変です。すこしでも、焦り・頑張り・無理しないことを念頭に穏やかで静かな生活を送る事が、私の病気と障碍に向き合った生き方です。多くを語らず、連れ合いとの生活・仕事が静かに穏やかに送れる事が私の現時点の望みです。急がば回れ・・・・・・・
【編集後記】
「人間は、知ることが出来る過去・現在を足場にして、誰にも不可視の未来に関心を持つ事ができます。」そのために心を開き、言葉を紡ぎ、つながりを考え行動します。仲間がいること、生きていることを確信できれば、「人間は信ずるにたる存在になる」ことができるのです。4足歩行から2足歩行になったぶん、手で火や道具を使う事ができるし、脳が進化したのでしょう。また、顔が前を向き、言葉を操り仲間同士で相互理解を図る事ができます。そうやって、なくしたもの、獲得したものがあります。この地球という惑星で人類は進化してきました。精神病と言う病が進化した脳をゆっくりと蝕み始めています。私は、人間という生物の様々な繋がりをもって絆を少しずつ獲得してきました。多くを語らず、穏やかで静かな暮らしを夢見て長生きがしたいです。そして、自分の統合失調症に振り回された時間・失った時間を長生きしてその時間を有意義に使いたいです。貴方は、自分だけの時間があったら何をしますか?私は、失った過去から未来を標榜して自分らしい時間を使って、過去・現在から未来を少しずつどんなものか確認して自分探しをしてみようと思います。