メンタルにゅーすVol.170

メンタルにゅーすヒエダ

 

私の使命

2014年  Vol.170

CIL(自立生活センター)下関発行

ピア・ハート下関(精神自助会) 編集 SAM

Tel(083)-263-2687

FAX(083)-263-2688

E-mail  s-cil@feel.ocn.ne.jp

URL   http://members.jcom.home.ne.jp/s-cil/

  私は、「メンタルにゅーすヒエダ」の前に援護寮ヒエダで入所時の約3年間「援護寮ヒエダ新聞」と言うニュースレターを編集しておりました。その一番最後の36号に次のような文章を書いていました。私にとって、こっぱずかしいのですが、この文章はなるほどいい文章だと、私自身思うので12年前の文章を現在(12年後)の私が読み直してみても感心しますので、もう一度復刻版を手直しして皆様に披露したいと思います。

 

The Last Job

 『援護寮ヒエダ新聞もこの号を持って最後とします。3年間というこのひと時を私にこの新聞を続けさせた、その原動力はいったいなんだったのだろうかと今考えています。

新聞の第1号は「精神障碍者保健福祉手帳」で第2号は「障碍年金」でした。私が新聞を作ってみたいと思い援護寮の施設長に許可を受けたときのことを、今でも鮮明に覚えています。今の自分があるのはその当時からの寮生、寮職員、支援センタ−、福祉工場、主治医、薬剤師の先生、病院職員のお蔭です。感謝しています。どうも有り難うございます。

 さて話を少し元に戻してみます。私が援護寮ヒエダ新聞を作るきっかけは、自分が障碍年金を受ける事ができるか寮職員に聞いて本を借りて勉強をしたのが始まりです。勉強をしてみて障碍年金のことから始まり医療・福祉・制度を理解していくうちに、綿が水を吸うように私の頭の中に全体像がつかめはじめました。その時、私は自分で自分に腹が立っていました。それは何故かというと病気や障碍、福祉、制度のことは本をみれば分かるのに、今まで勉強しようとしなかった。また時代(1970年代)が精神障碍者は病気のことを知らない方がいい、下手に知ると当事者本人の状態が悪くなるといわれていました。私は援護寮ヒエダに来てから精神障碍について勉強しようと思い始めたのは、寮職員に聞いたら気軽に教えてくれる環境に自分がいたのがきっかけだと思います。元々知的好奇心の旺盛な私はとにかく自分の病気のこと、その障碍の特性が知りたかったのです。そして病気・制度・精神障害者の権利等が分かってくると自分に少しずつ病識らしきものがついてきました。自分の精神状態をコントロールできるようになってきたのです。(病気と障碍の対処すること。)

 そしてもう一つ私は自分の頭の中に落とし穴の分かる地図を作ろうと考えだしました。自分のこれからの長い付き合いとなる統合失調症という生活習慣病の注意点、折り合いのつけ方、対人関係等、生活全般のトラブルマップがあればいいなと思いました。確かにこの地図は役に立ちます。実際の生活で落とし穴に躓(つまづ)きかけることを度々経験しますが落とし穴に落ちないように自分で注意するようになりました。その「地図」があると何が便利かといろいろ理由を考えてみますと何か分からないことがあったときに制度・病気・医療・福祉・就労・生活全般のことが分かるので自分が状態を崩しかけたりしたときに迂回路が見つけやすく、危険を回避できるのです。この他に、この新聞を作っていく間に自分の周りにいろいろな人脈(友人、医療関係者、福祉従事者等)ができたことは、私にとっての大きな収穫となりました。人は1人だけでは生きていけません。その人の人生でどれだけたくさんの友人、知人ができることが私たち人間の財産ではないかと改めて思います。

 最後に今までこの新聞を読んで下さった皆さんどうも有り難うございます。当事者、医療関係者、福祉従事者等といろいろな読者の方がおられると思います、少しだけ精神障碍の知識がついて心の中にゆとりができて分かっていただければ、私、SAMはそれで幸せです。それでは私のラストジョブをこれで終らせていただきます。

 私は自分の抱えている統合失調症を抱えてこれからも生きていきます。少しずつ実現可能な目標を立てて確実にクリアして幸せな人生を送っていきます。私の人生は私のものであり自分で決めて、実現して頑張っていこうと思います。何かで悩んだり分からないことがあった時、皆さんがこの援護寮ヒエダ新聞を読んでくださってうまく社会生活をおくる参考になれば幸いです。皆さんの最高に幸せな人生を蔭ながら祈っています。

 尚、援護寮ヒエダ新聞は地域活動支援センターひえだに「精神障碍者自立生活マニュアル」として置いてありますのでバックナンバーを見てください。

 

(援護寮ヒエダ新聞の発行を終わるにあたってU施設長より一言)

 『 SAMさん、長期間にわたる新聞の発行ご苦労様でした。

 初めて、SAMさんが援護寮に来られたときのことを今も鮮明に覚えています。

あれから、211ヶ月あまり時がたつのですが、その間、SAMさんの行動力・知識欲には目を見張るものがあり、我々スタッフが見習いたいことが多々ありました。

 特に、「援護寮ヒエダ新聞」作成においては医療関係者から情報収集、及び自らの足で取材をし、遅くまでパソコンの前で編集しているSAMさんの姿が目に浮かびます。

 寮に見学者やご家族の方が来られた際、そのオリジナリティー溢れる「援護寮ヒエダ新聞」を「うちの寮生が作った新聞です。」と誇らしい気持ちで渡すことができました。読まれた方々にも「分かり易く、今まで知らないことがありました。」と好評を得ています。

特に、私個人が感銘を受けたのは、Vol.32の「統合失調症と共存して地域で生きる」です。SAMさんの発病から現在に至るまでの経路が赤裸々に書かれていました。幻聴・妄想の症状がある人に対し、どのような対処の仕方をすれば良いか頭でわかっていてもなかなか巧くいかないときは、この新聞の内容を思い出すと同時に多くの人に読んでもらえたらと思います。

 これからは、新聞の記載にあったように精神障碍もさまざまな障碍の一つで、本人や周囲が十分に障碍の特性を理解し、環境を整えていけば当たり前に暮らしていけるということを、当事者の言葉で伝えていく礎になってもらえればと思います。頑張ってくださいね。』

【編集後記】

 私のニュースレターの出発点「援護寮ヒエダ新聞」から「メンタルにゅーすヒエダ」まで現在も編集が続いています。私が今思うになんと壮大な時間をつかって、ニュースレターを編集したのだと感慨ひとしきりです。私自身「援護寮ヒエダ新聞」の発行を施設長に許可を得たときから、ニュースレターを簡単にやめることより続けることのほうが遥かに難しいなとは当初考えていました。私がこのとき誓ったのは「継続」です。何事もはじめたら続けようと決心しました。何とか、援護寮に入所中最後まで毎月編集することが出来ました。今号で取り上げたのは、「援護寮ヒエダ新聞」の最後の36号「The Last Job」を引用しました。後に、病気と障碍を抱えて、これから進むそれぞれ各人のトラブルマップを、制度・病気・医療・福祉・就労・生活全般から分からないこと、躓(つまず)くことを想定して「精神障碍者自立生活マニュアル」として冊子を作りました。これは、当事者が社会の中で生きていけるように最低限必要なものを編集しました。また、当事者の身に何か起こったときに解決できるバイブルとして、何度も読み返していただければ、私(SAM)も嬉しく存じます。

 10年一昔と言いますが、私の中では、私がニュースレターを編集した12年間も光陰矢のごとしでした。但し私の頭の中では、知的好奇心の旺盛な私という人格の中に染み入るように知識が蓄積、取捨選択されながら、その時々の制度の中で何とか生きてきました。私が当事者として声を上げてニュースレターの編集を始めました。仲間が過ごしやすい下関市であるように祈ります。何事も始めたら続けなければいけませんね!メンタルにゅーすはこれからも続きますよ・・・・・

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