メンタルにゅーすVol.183

メンタルにゅーすヒエダ

 

「当事者を抱える母」

2015年  Vol.183

CIL(自立生活センター)下関発行

ピア・ハート下関(精神自助会) 編集 SAM

Tel(083)-263-2687

FAX(083)-263-2688

E-mail  s-cil@feel.ocn.ne.jp

URL    http://members.jcom.home.ne.jp/s-cil/

 何年か前にJILのメーリングリストで、「精神障害者自立生活マニュアルができたので、ほしい人は連絡をしてください。」というSAMさんからの呼びかけに応募し、それから何度かメールでSAMさんとお話をしたり、「メンタルにゅーすヒエダ」を読ませていただくようになりました。

 娘は13歳の時に統合失調症という診断をうけました。中学校でのいじめがきっかけで発症し、養護学校に転校して高等部を卒業、20才台になった今は精神障害者の支援をしているNPOB型事業所に通っています。

 最初の主治医には「長くかかりますよ」といわれました。「長くかかるって、2年?3年?」、今になれば笑い話ですが、先が見えない、見通しがたたないことが一番の不安でした。

 調子が悪くなれば、いらいら、叫ぶ、暴力的になる、死にたくなる、衝動的になる、などの困った行動があり、矛先は一緒に暮らしている私たち家族に向けられています。また、体は大人ですが、物陰に隠れて人を驚かせて喜んでいる様子も、会話の内容もまるで小学生のようです。

理解はしているつもりでも、そんな娘をいらだたしく感じたり、一緒にいることが苦痛になることもしばしばです。親と一緒に暮らしている限りは、親は娘に世間並みの人間になって欲しくてあれこれと注文をつけるし、行動を制限しようとしたり、価値観を押し付けたりするのは当然のことです。でもそんな生活がずっと続いていいのかな、と思うのです。

 私は小さなCILで車いすの人たちの自立支援にかかわっています。ほかの家庭を見れば「親は自立の手助けはできないものだな〜」と思いますが、さて、では自分の娘の自立はどうやって進めていけばいいのでしょうか。

 病気になる前から、「大人になったら家を出て自立しようね」と話をしてきました。今は病気をしたからこそ親元から離れて、他人様のお世話になって生活できるようになりなさい、と話しています。私にずっとそう言われてきたせいか、何となくその気ではいるようですが、実感はいまいち伴っていないかもしれません。親の希望ではなく、自分自身の思いになる日は来るでしょうか。

 今お世話になっているNPOのグループホームで体験入所を始めたところです。でも部屋があく見通しはないし、もっと切羽詰った事情の人が優先されるので入所の希望はずっと先まで叶いそうもありません。だからといって、アパートでの一人暮らしは心配です。何かやらかすんじゃないかと。

 「メンタルにゅーすヒエダ」でSAMさんの生活を垣間見ると、回りの方々に支えられながらご自身も成長し、奥様とも平穏な生活を営まれている様子がうかがえて、なんとも落ち着いた気分になります。いつかきっと娘にもそんな日が訪れるのではないか、と、いつも希望を与えてもらっています。

 

                    東北地方の小さなCILの関係者

 

【編集後記】

私は、統合失調症に罹患してから嘘ばかりついていました。3回目の入退院である決心をしました。「人には誠実に対応し、嘘はつかない。」「やり始めた事は継続し、簡単に投げ出さない。」と、そう一大決心のもと援護寮ヒエダに入所しました。病院の敷地内に援護寮ヒエダがありますので、精神科病院は稗田病院にしました。今度こそは最後のチャンスと心を入れ替えて自立生活を目指しました。

昼間仕事は、福祉工場のランドリーがありましたので服やタオルの洗濯・乾燥・折りたたみの仕事をしていました。私は、当事者仲間・ランドリーの職員に可愛がられていました。こんな体験は、7歳までじいちゃん、ばあちゃんに可愛がられて以来です。私の人徳なのか、下関に来てから14年が経ちましたが、総じて、仲間や各施設の職員・病院の主治医や看護師さん・支援センターの職員、職場のCIL下関の同僚・上司にも可愛がられてきました。私は、会う人みな私の師です。

沢山の皆さんのサポートで私は、こうやって結婚してCIL下関で仕事をしています。「人間は考えたとおりの人間になる。」と何かの本に書いてありました。悪人になろうと思えばそのとおりの人間に。いい人になろうと思えばそのとおりの人間になります。それを観て知っている人は、静かに遠くから見守っている人がいます。私は、そう思いながら仕事をし、生活しています。私も、自分の周りの人たちが幸せになるように祈っています。私と言う人間は世界でたった一人の人間です。自分で自分を誉めてあげましょう・・・・

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