【地域生活支援センターの概要と現状】
ここ十年ほど、「地域生活支援」「地域支援」といった言葉が障碍者分野のみならず福祉分野全般に用いられており、まさに福祉施策のキーワードとも言えます。耳障りの良い言葉であり、次のようなことが想像できます。すなわち、「精神科病院入院者が退院をし、地域で生活していくための支援」「知的障碍者や身体障碍者が収容施設から退所して、地域でホームヘルパーなどの介助者の協力を受けて生活をする。」「地域の公共施設や制度を利用しながらボランティアなどの協力を受けて余暇活動などを行う。」といったことがイメージされます。
1996年から全国的に運営が始まった精神障碍者地域生活支援センターは、2006年10月から、障碍者自立支援法の施行により、これまでの精神保健福祉法に変わり障害者自立支援法に基づく市区町村事業となり、相談支援事業と地域活動支援センターT型事業に変更されました。新事業に移行した後も移行前と同様に地域生活支援センターの活動が継続されているところが多いです。そのため、ここでは、地域支援事業における相談支援事業と地域活動支援センター事業T型を地域生活支援センターとして概要、現状、これまでの活動を通して見えてきた役割や今後の課題に触れてみます。
【わが国の地域生活支援センターの始まり】
1995(H7)年12月、厚生省(現、厚生労働省)は、「障害者プラン―ノーマライゼーション7ヵ年戦略―(H8〜14年度)」を発表した。そのプランの一つとして、身体・知的・精神の三障碍種別ごとに地域生活支援センターの設置数値目標が示されました。
身体障碍者においては「市町村自立生活支援事業」として、障碍者自身の自立生活支援として、介助者派遣、ピア・カウンセリングなどを中心に支援がなされてきた歴史があり、その流れを受け地域生活支援センターが事業化されました。また知的障碍者においては、「障害児(者)地域療育等支援事業」以前、通勤寮などに生活支援ワーカーを配置したことを受け、地域生活支援センターが事業化されました。精神障碍者地域生活支援センターは、平成11年(1999)年の精神保健福祉法の改正により、単立の社会復帰施設に位置づけられ、職員定数も一名増員されました。
【地域生活支援センターの運営】
地域生活支援事業の設置は市区町村となり、運営は市区町村が委託した社会福祉法人やNPO法人等が行っている。障碍者自立支援法の趣旨から、障碍種別を問わずに活動される事を想定しているが、これまでの精神障碍者を対象としてきたところでは、専門性を有する特定の障碍として重点的に行っているところが多いです。
・ 相談支援:障碍福祉サービス等の情報提供、相談アセスメント、ケア計画の作成、サービス調整、モニタリング等の福祉サービスの利用援助、社会資源を活用するための支援、専門機関の紹介等自立した地域生活を営むための総合的な支援を行います。
・ 地域活動支援センターT型:障碍を持つ人が通い、創作的活動又は生産的活動の提供、社会との交流の促進を図ります。
【地域生活支援センターの役割と今後の課題】
「地域生活支援センター事業」が1999(H11)年に法定化して7年、各地に広がり、地域の精神保健福祉の拠点となりつつある。「新障碍者プラン」において、社会的入院者の退院促進案が出され、全国各地でこの実現に向けての取り組みが始まってきていました。この施策において地域生活支援センターの果たす役割には大きな期待が寄せられていました。
そこで地域生活支援センターがこれまでに果たしてきた役割を整理し今後の課題について考察をします。
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活動内容と役割
これまでの活動を通して、地域生活支援センターが地域精神保健福祉活動に果たしてきた役割として、以下の項目が挙げられます。
・社会復帰や地域生活をしていく上での身近な相談の場
・日常生活での必要な支援(訪問、同行など)を迅速に行う場
・地域生活を行う上での支援内容についての協議とコーディネーターとしての役割
・気軽に利用できる交流スペースでの仲間作りを通した生活の安定の場
・ボランティア教育、ボランティア育成のコーディネーター機関
・精神保健福祉に関する市民への啓発と情報提供の場
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今後の課題
今後の課題としては、以下が挙げられる。
・職員配置の不足という問題の解決
・関係施設、機関との連携の促進
・地域生活支援を円滑化するケアマネジメントの活用の推進
・行政との相談事業などの役割分担の明確化
・支援対象者の障碍の多様化への対応
・社会的入院者の退院促進などの取り組み
これらの課題を制度面、財政面、運営面などから1つひとつ解決していきながら期待に応えていかなければなりません。誰もがどこの地域に住んでいても同じ支援が提供されなければならないし、よりきめ細かな支援が提供されなければならないです。地域生活支援センターの活動エリアの関係機関をはじめ、より多くの市民と協力をし、さらに有効な連携を確立していくことが求められています。
参考文献 「精神障碍者の退院計画と地域支援」 田中美恵子(編著)医歯薬出版
【編集後記】
私は地域生活支援センターには、大変お世話になりました。H13年2月の生活訓練施設援護寮ヒエダに入所して、福祉工場、一般就労をし1年間CIL下関へ通勤しました。1年間の通勤で就労に慣れるまで様々な事を相談しました。H20年9月の結婚する前まで支援センターにお世話になりました。私のことを援護寮入所当時から知っている支援センターひえだの職員はYさん一人きりです。お互い知り合って13年くらい経ちました。いつお会いしても穏やかな人でした。今も穏やかです。彼女が怒ったり大きな声をあげる事はまずありえません。支援センターには「メンタルにゅーす」を届けに行っておりますので月に2回は会うはずなのですがお会いすることがありません。仕事を沢山抱えていますので忙しいのでしょう。以前は支援センターで喫茶がありましたのでよくカツ丼やカレーを食べていました。夏はかき氷を食べに足繁く通っていました。あれから年月も経て私は57歳になりました。Yさんもそのときの年齢に13歳、歳をとったわけですが、まだまだお若い人です。時々顔を合わす機会がありますが挨拶をするくらいです。しかし、お互い歳をとったのですが、目に見えて歳をとったのは銀髪の私の方です。
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