メンタルにゅーすVol.213

メンタルにゅーすヒエダ

 

「うつ病を軽く見ないで」

2016年  Vol.213

CIL(自立生活センター)下関発行

ピア・ハート下関(精神自助会) 編集 SAM

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     うつは体の病気でもあった!

 うつ病は無理な生活を重ねれば誰にでも起こる病気です。ですから「風邪と同じポピュラーな病気である。」といえなくもありません。また、単に心の病というよりは、むしろ「身体の病である。」という点でも、万病のもとといわれる風邪に似ているかもしれません。

 実際、うつはさまざまな身体症状を伴います。一般には「暗く鬱々とした気分が続く病」と思われていますが「心の辛さを主な症状とする体の病」なのです。

 例えば家族を亡くしたなどの、大きなショックを受けた出来事の後に、頭痛やたちくらみ、下痢や便秘などが起きた場合、皆さんは内科を受診し、さまざまな検査をしてもらうでしょう。しかし明らかな異常が見つからないときは、精神科や心療内科に紹介されることになります。そこで改めて医師の診察を受け、「うつですね」と診断されたとします。

 ところが「私の病気がうつのはずはない」と否定したくなる。なぜかといえば、もうすっかり辛い時期は乗り越えたはずと思い、精神的に落ち込んでいるという自覚はあまりないのに、身体は動かず、いろいろな症状が重複して現れるからです。「何か別の病気では?世間では精神の病と思われているうつだとは・・・・・」と患者さんはひどく混乱してしまいます。「私の病気はうつではない」と思われる気持ちはよくわかりますが、体に現れるそれらの症状は、まさしくうつで頻繁に見られる症状なのです。

    放置してもうつは直らない

 

うつに伴って現れるさまざまな症状を以下に示します。

 

うつに特徴的な心と身体の症状

 

心の症状            身体の症状

 

1強いうつ気分         1痛み

 

2興味や喜びの喪失       (頭痛、腰痛、腹痛など)

 

3食欲の障碍          2倦怠感

 

4睡眠の障碍          3肩こり

 

5精神運動の障碍       4食欲不振

 

(制止または焦燥)       5胃腸症状(下痢、便秘)

 

6疲れやすさ、気力の減退   6発汗

 

7強い罪責感          7息苦しさ

 

8思考力や集中力の低下

 

9死への思い

 確かに抑うつ気分や不安・焦燥・精神活動の低下など、心の症状を伴うのは多いのですが、身体全体を見回すと、倦怠感や疲労感、風邪をひきやすい、熱が出やすい(免疫系、体温調節機能の低下などによる)、食欲不振、胃部不快感、下痢、便秘、消化不良(消化器の働きの低下から)といった症状も見られます。

 このほか、眠れない、起きられないなどの睡眠障碍、頭痛、頭重感、肩こり、しびれ、身体の各所の痛み、めまい、動悸、冷や汗など(自律神経のバランスが乱れて起きる、自律神経失調症ともいう)、さまざまな症状が現れます。

 ここから、うつは非常に多彩な症状を伴った身体の病気といえることがお分かりになるでしょう。

 では誰でもかかる身体の病気なら、風邪と同じかといいますと、回復までの時間が長く、簡単に直らないという点では、風邪と同じとは言えません。

 それどころか「風邪と同じなら、放っておいても治るだろう」と安易に考えたとしたら、それはとんでもない誤解です。早めに発見して治療を始めることができれば、多くの場合は改善しますが、それでも風邪のようにほぼ1週間で治る、というほど簡単なものではないのです。

 一般的に治療を開始してから6ヶ月すると、うつの3分の1は症状の回復が見られ、1年以内に70%弱が回復するとされています。

 しかし、回復が期待できる半面、再発が多いことがうつの特徴で再発を繰り返すごとに症状も重くなりがちです。放置すれば命にかかわることもあります。家族ともども“精神科”への拒否感が強く、受診しないでいるうちに悪化してしまうケースもずいぶんあるようです。

 つまり、患者さん本人は気長に腰を据えて治療に取り組まなければならず、周囲も長い間、温かく見守る必要がある、それが風邪とはいえないのです。

 

参考文献:「その習慣を変えれば『うつ』は良くなる!」佐々木 司著 講談社

 

 

【編集後記】

 よく、「うつは心の風邪」といわれることが多いです。風邪といえば放っておけば治るというような感じですが、うつは放っておいても治りません。治療が早いほど重度化しません。慢性化することが多く、きちんと治療をすることをお勧めします。重度化すると体のあちこちに身体症状が出てきて、なおかつ心の症状が出てきます。うつに特徴的な心と身体の症状を良く見て考えてください。うつだと思ったら、精神科・心療内科の門をたたいてください。早い治療が重度化や慢性化を防ぎ、心や身体が楽になります。間違っても「うつは心の風邪だから放っておいたらすぐ治る」というようなとらえ方をすると後で、大変なことになりますよ。うつは、病院にいってきちんと治療してくださいね。

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