メンタルにゅーすVol.218

メンタルにゅーすヒエダ

 

「統合失調症から学んだこと」

2016年  Vol.218

CIL(自立生活センター)下関発行

ピア・ハート下関(精神自助会) 編集 SAM

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E-mail  s-cil@feel.ocn.ne.jp

URL    http://blog.livedoor.jp/npo_light/archives/cat_8979.html

 SAMが統合失調症を罹患して34年が経過しました。発病してからの20年間は自暴自棄な生活をしていました。私が病気と障碍を受容して向き合うようになったのが発病して21年目でした。発病してから考えたことは「何故私が統合失調症に罹患したのか」「病気と障碍を克服して仕事をしなければ」ということでした。

 病気と障碍を克服したり、戦っても何のメリットもありませんでした。今思えば病気と障碍の付き合い方を変えることで症状が緩和されたことに気づいたことです。つまり、病気と障碍を受容して対処していこうと考え始めてから、私と統合失調症の関係が変わってきました。病気と障碍に戦うのでなく受け入れ対処することを第一目標に生活するようになりました。それには、私が統合失調症の実態を知ることが必要でした。私には残存した幻聴と妄想の対処が必要でした。私への悪口の幻聴、被害妄想が自分には現実に起こっていましたが、それがすべて偽りなものであることが、病気と障碍を勉強して分かりました。つまり、幻聴と妄想が私に自覚がありましたが,それはすべて幻で客観的に現実に起こっていることではないということです。いままで、現実なことと自覚していた残存した幻聴と妄想に囚われていたことがすべて偽りの幻だったということです。

 幻聴と妄想が現実でないことを教えられたのは、当事者仲間に相談したときでした。幻聴と妄想が残存していてもそれに対処して生活している人は多いことに気づきました。主治医に相談したら、その当時新薬として使われ始めたリスパダ−ルに変更となりました。薬の変更により幻聴と妄想の残存症状が消失するかと淡い期待をかけていましたが、上手くいきませんでした。薬が幻聴と妄想の消失に効果を発揮しませんでしたが、それらの症状があっても少し耐性がついたように思いました。残存した幻聴と妄想が偽りのものだという自覚ができて、それらの症状に囚われなくなってきました。

 今思えば、援護寮にきてから病気の対応の仕方が変わりました。病気と障碍に対して克服しよう―というスタイルではなく、付き合い方を変えて対処するようになりました。あせらず・頑張らず・無理しないで病気と障碍を受容して上手く付き合うように、付き合い方を工夫することを実行してきました。そうしたら、少しずつ残存した幻聴と妄想に対処できるようになりました。対人関係を穏やかにして、相手を知るようになってから幻聴と妄想に囚われないようになってきました。

 それまで、私の周りの人たちは病気と障碍にめげないで克服しなさいとか、考え方次第だと言われ続けていました。薬は身体に悪いから服薬しないほうがいいとか色々言われていました。

 私が次に考えたのは、統合失調症という病気を勉強して、現実を受け入れるということでした。自分の病気と障碍のことを正確に勉強して、現実を受け入れること、最新の治療、病気の予後、病気との付き合い方、薬の副作用、社会復帰の仕方、制度等さまざまなことを勉強しました。

 本を開いて、さまざまなことを勉強して分かったことは以下のことでした。

@    病気と障碍を克服するのでなく受容して対処する。付き合い方を工夫する。

 

A    統合失調症の第一選択治療は「服薬」である。

 

B    「治癒」と「寛解」。統合失調症は服薬で病勢を抑えることはできるが治癒することはない。ただ、休火山のように病勢を穏やかにするだけ。服薬を止めると火山が爆発するように状態が増悪する。

 

C    病気と障碍を受け入れて、規則正しいリズムで生活する。

 

D    定期的に通院し、服薬を継続する。

 

E    あせったり・頑張ったり・無理しない。

 

F    自分にあった病気と障碍の対処法を工夫する。(読書、音楽鑑賞、散歩等)

 

G    適度な睡眠と休息は大事。

 

H    余暇の過ごし方の工夫。

 

I    できれば、1日に45時間デイケアや福祉的就労ができればベスト。

 

J    就労が最終目標ではない。

 

K    自分にあった毎日の過ごし方を見つける。

 

L    できないことをできるようにするのでなく、できることを少しずつ増やす。

 私は、統合失調症を発病して20年間、病気を克服して仕事ができるようになろうと考えて過ごしてきました。そうじゃなくて、病気と障碍の付き合い方の工夫することで、少しずつ残存症状に対処することができるようになりました。あせったり・頑張ったり・無理しないで自然体でできることを毎日少しずつ増やしていきました。できないことをできるようにするのではなく、病気と障碍に対処して向き合うことが大切だと考えます。

【編集後記】

  結局私は、統合失調症を克服するのではなく、残存した症状の幻聴と妄想に向き合い無理しないで頑張ってきました。急がば回れといいますが、「克服」より「対処」で病気と障碍との付き合い方の工夫を重ねてきました。今思えば、戦うより受け入れて向き合うこと、付き合い方を工夫することで何とか病気と障碍と共に生きてきました。私にとっては克服するより、病気と障碍の向き合い方の工夫で近道より遠回りをしてきたように思いますが、何とか統合失調症と共存しています。その方が、私にとって統合失調症を抱えながら生き易かったようです。私は病気と障碍に戦いを挑んでも勝てないので、受容して向き合い付き合い方を工夫するほうが、かえって生き易かったのです。皆さん、私のような病気と障碍の接し方も参考にして、病気と障碍の対処法を自分なりに考えてみてください。

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