メンタルにゅーすヒエダ

 

「薬のさじ加減の意味」

201731日  Vol.224

CIL(自立生活センター)下関発行

ピア・ハート下関(精神自助会) 編集 SAM

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 昔、薬はさじで調合しました(医師:渡邉博幸

 皆さんはじめまして。渡邉です。
私は精神科の医師ですが、この仕事に就いて早20年も経ちました。
最近は、単に症状を減らすだけでなく、患者さんの希望や生き甲斐を手助けすることが、私たちの役割と感じております。そのせいか、生活の中から、治療のヒントや医療者としての学びをいただく機会が増えました。そうした中で学んだことから、精神科でよく使われる薬の処方量について、考えたいと思います。
日々の診療の中で教わった当事者の方々の知恵や工夫を皆さんにお贈りできたらいいなあと思います。よろしくお願いいたします。

タイトルの意味

 ここでのテーマは「さじかげん よいかげん〜ちょうどよい薬の量の話〜」というタイトルの意味についてです。さじ加減という言葉を聞いたことがありますか?
このさじは、昔の医者が薬の調合に用いた薬さじからきています。
薬をさじですくいとり、量を微調整することを加減といいますが、すでに江戸時代には、薬が命を救うことも、逆に毒になることもあると認識されていたようです。そして、細やかに微調整するということから、「状況に応じて、相手に配慮したり手心を加える」という意味にも使われるようになったそうです。

処方の『さじ加減』の意味

 2000年を前後して、新しい向精神薬がたくさん開発され、代表薬剤の世代交代が起こりました。
それだけでなく、これら新薬の使い方は、大規模な臨床試験や治療ガイドラインを参考にするようになり、診療経験や当事者との工夫による微調整(つまりさじ加減)の余地は激減したように思われました。
しかし、ガイドライン指針の多くは、「こういう病態や状況には、この薬剤がおすすめ」という目安を示していますが、「どのくらいの量が適正か」は明らかにしていないことが多いのです。

 薬の添付文書には、初回投与量・最大量・一定期間での増量の範囲・年齢や身体状態での違いなどによる量の加減が定められています。
しかし、いざ、個々の状況に応じて、「どのくらいの量から始め、副作用と効果を計りながらどのように量を調整し、再発を防ぐための維持量はどのくらいにするのか」などを決める場合、統一した方法はなく、まさに、処方量の微調整、治療の技法としての『さじ加減』が必須となります。
また、このような技術的な観点だけでなく、服用する皆さんの気持ちや生活への影響、仕事や結婚など大切な人生設計を相談しながら、最適な量を決めるという心配りとしての『さじ加減』も同じくらい求められます。今回は、『さじ加減』という言葉から、
@処方量の設定は、多くの条件を考えながら微調整する技術的な課題があり、それによって薬が助けにも害にもなりうること
A服用する方の気持ちと生活への心配りをもとに処方量を決めるのが大切なこと、
をお伝えしました。

渡邉博幸
千葉大学社会精神保健教育研究センター治療・社会復帰支援研究部門
profile
 わたなべ ひろゆき千葉大学医学部附属病院で精神科医としても働いています。趣味は、20代の頃夢中になっていた『がらくたの修理や磨き』が復活。ご時世か、昔よりよい掘り出し物が少なくなった気がします。好きな音楽は泉谷しげる。お餅、お団子、ご飯類など炭水化物が好きで困ります。運動が不得手なので、健康のため、なるべく歩いたり、掃除をしたりして、『これも運動だ』と自分に言い聞かせています。

【編集後記】

 薬はさじ加減といいますが、昔薬の調合を「薬さじ」で調合していたことは知りませんでした。患者や病状によりさじで薬の加減を微妙に調整することを言うとはついぞ知りえませんでした。精神の雑誌で「心の元気+というのがあります。今回の薬のさじ加減の記事は、この雑誌の中から割愛しました。この雑誌は、2時間ぐらいで読めますし、なかなか役に立つことが掲載されており、私は毎月読んでおります。皆さんも一度読んでみてはいかがですか。CIL下関では定期購読していますので、事務所に寄って見てください。

 雑誌よりはサイドブックとして、私は頻繁に参考にしています。皆さんも、定期購読してみてください。いい雑誌ですよ!!

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