メンタルにゅーすヒエダ

 

H29.6精神保健福祉法改正」

2017816日  Vol.234

CIL(自立生活センター)下関発行

ピア・ハート下関(精神自助会) 編集 SAM

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精神保健福祉法改正について

精神保健福祉法(正式名称:「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」)

●改正の契機 

精神保健福祉法の3年後の見直し。

平成28726日におこった、相模原市の障害者施設殺傷事件の再発防止策として。

政府の事件検証検討チームの最終報告まで一貫して、相模原障害者殺傷事件の再発防止のことを書かれ、施政方針演説でそれに基づき法案を出すことを明らかにしてきた。

同法案は、相模原事件の被告に措置入院歴があったことを理由にあげ、主に措置入院制度の強化を図るとしている。

727日には厚生労働大臣は「措置入院後のフォローの充実が必要との指摘も当然ある」とかたる。28日、首相は「再発防止」「措置入院後のフォローアップの強化」などを指示した。

88日に検討会の設置表明。早々に「措置入院」問題とし、事件の「再発防止」を打ち上げた。検証・検討チームなどの議論を経て平成292月、改定案が出された。

どのように変わるか この改正法案により措置入院から退院までの過程で医療機関と行政機関(警察を含む)のネットワークをつくり、措置入院患者の情報を共有して、退院後に続けて医療等を受けるように、監視・指導を行う。

※措置入院とは…本人や家族の同意なく、都道府県知事の権限で強制的にさせる入院形態のうちのひとつ。「自傷他害の恐れ」が要件。

●本質的なポイント

@法案趣旨から「相模原市の障害者施設の事件では、犯罪予告通りに実施され、多くの被害者を出す惨事となった。審議途中に厚労省ホームページにも掲げられていた、概要のポンチ図の趣旨の冒頭「二度と同様の事件が発生しないよう(中略)法整備を行う」の文言を除外。後に塩崎厚生労働大臣が謝罪。

趣旨が間違っていると認めている。法案を作り直すべき。

A事件の犯人が精神鑑定で責任能力あり。

精神障害が原因でない。したがってこの立法を支える事実がない

B犯罪予告通りに実施された。

警察の初動捜査のミス。

C政府は再発防止のために、

1)障害者への差別思想の問題

2)警察のミス

のことは触れずに精神保健福祉法改正で対処しようとしている。

政府は問題を誤認している、もしくは問題のすり替えをしている。

●法案のポイント

D措置入院患者の退院後支援の機関(精神障害者支援地域協議会)に警察が加わる。

患者の監視強化。病院と警察が連携すると薬物依存症患者は医療に安心してかかれない。

薬物依存症患者は今でも日常生活で警察に監視されているような状況にある人もいる。

E退院後支援計画の作成や連絡調整を目的とする会議(個別ケース検討会議)の参加者は「必要に応じて、障害福祉サービス事業者、本人・家族等」

本人不在の支援。(修正案で訂正)

F医療保護入院で家族等の同意が得られなくても市町村長の同意により入院させることができる。

強制入院させやすくなる

※医療保護入院…本人が同意しなくても家族などの同意で入院させられる強制入院のひとつ

G517日の参議院で可決された際、「施行後3年をめどに見直し」などを附則に加える修正と18項目もの附帯決議が行なわれた。

精神保健医療が治安維持を担うとの誤解や懸念が生じないよう留意する、支援は半年以内程度とし、例外的延長は原則1回、本人が納得しない場合は支援計画を見直す、本人が拒む場合は個別ケース検討会議に警察を参加させない、など

●結論

この問題の本質は差別に基づく犯罪なので、必要なのは差別への対策である。しかしこの改正案では精神障害者に対する差別を助長しかねない。医療は本人の健康回復のためにある。犯罪予防を医療に任せてはいけない。

 今回の法改正は、2003年の心神喪失者等医療観察法成立の時や、1964年の「ライシャワー事件」を契機に改正精神衛生法が施行された状況とも似ている。

政府は事件を真正面から究明する事を回避し精神障害者の差別・偏見を助長するやり方を、改めるべき。

大量殺傷事件で考えると、大人数の施設であるのが原因の一つ。地域移行を進めていくことがとても重要。

●情勢

今年の通常国会(193回国会、1月20 6月18)の間、廃案にすべく当事者を中心に、全国各地で抗議活動が行われた。国会前座り込み行動は411日〜14日まで貫徹された。324日と425日、68日には「こんどの精神保健福祉法改正案は絶対におかしい!!」と題された院内集会が開催された。他にも全国各地で集会が開かれた。425日の院内集会は審議日程とも重なり、参加者256人、議員6人が参加した。                                                   

精神保健福祉法改正案は、次期国会へ継続審議となった。3月からの関係団体の運動により成立を阻止することができたが、廃案までは追い込めていない。次期国会で改めて審議が行われるので、継続した運動が必要。

また本法案は参議院先議。参院厚労委の審議は28時間に及び、大もめになった。既に参議院を通過しているので、次期国会では衆議院のみになる。

八王子精神障害者ピアサポートセンター 竹沢幸一

自立生活夢宙センター 陶延彰 

 

参考

    入院形態

条件

措置入院

医療保護入院

任意入院

本人が入院を同意

するかの有無

無(強制入院)

無(強制入院)

有(自発的入院)

病院と入院治療契約

を結ぶ人

都道府県知事

家族等

本人

 資料:自立生活夢宙センター 陶延彰 作成

 相模原事件の本質は優生思想にあり、これは容疑者のみならず、すべての人が多かれ少なかれ持っている差別心だ。ここをなくさないと同じような事件は起こる可能性がある。その度に精神障害者は危険な存在として新たな法律を作られたり、どんなに人権を無視された行為も「病気の治療のためです」「患者さんを守ることです」とすべて「支援・治療」とされてしまうことがあるだろう。これでは、私たち精神障害者は人生を自ら選ぶことができず「自由で創造的な自立生活」を送ることができない。相模原事件の根本にメスを入れるなら、統合教育と人権教育、すべての障害者にお店、職場、病院まで合理的配慮が行われるようにしないといけない。また今回の事件の加害者は「私たちすべての人にある」と自分の加害者性を認識しないといけない。「現実は難しい」と言われることもあるが、人権を侵されている者が「夢や理想」を描けなくなり、それを追わなくなれば街のすべてが施設化し、人生は奪われ続ける。私はすべての精神障害者が強制的な入院や刑期のない拘束をされること、説明のない医療、または今回の法改悪により常に監視されることでなどで自尊心が傷つけられ、かけがいのない自分の人生を諦めざる得なくなっていることが心の底から許せない。そしてすべての障害者が尊厳を守られなければならないと心から思う。

自立生活センターリングリング 船橋裕晶

【編集後記】

「措置入院経験者SAMの思い」

 SAMも平成9年から平成13年まで措置入院を経験しました。原因は、断薬によりイライラし精神症状が悪化したからです。私の場合、近所のドアや窓を割って歩きました。何か特に理由があったわけではないと今では考えています。SAMは、今思い出すと隣近所の人に大変な迷惑をかけ、怖がらせたと猛省しております。措置入院になり、状態が安定するまで保護室(昔は隔離室と言っていた。一種の牢屋で食事、就寝、トイレが同じ部屋にあり一種異様な悪臭がしていて薄暗い病棟でした。)で1ヶ月近く居ました。病状が安定してきて、SAMが大変な事をしたことに冷静に考え始めていました。ところで措置入院の要件は自傷他害のおそれ(当事者が自殺する可能性、他者に他害行為がある場合)と、精神保健指定医(精神鑑定が出来る資格を持つ厚労省の指針で特別な研修・勉強をした証を持つ精神科指定医)2人の意見が一致したときに措置入院になります。SAMは記憶の欠落しているところがありますがはっきりと覚えています。SAMはそれまで精神障害者が罪を犯しても、罪に問われないと勝手に思っていました。かえって得意げに家族に話していました。ところがどっこい、いざ自分が、警察に保護されて精神保健指定医2人の診察を受けて、措置入院になった事を冷静に考える事ができるようになってきたときには、世の中で生きていくのに生半可な生き方はありえない事に気づきました。責任を問われなくとも、それが精神病に起因すると自傷他害の症状が取れるまでは、自分の意志では退院はできません。病院は措置入院患者の病状経過を半年ごとに県庁の健康増進課に報告する義務があります。

 最近の措置入院では数ヶ月から1年以内に措置解除され病状が安定して退院しているようです。私の場合、1年で自傷他害の症状はなくなり大変なことをした事に猛省して、今後社会復帰するには、その当時あった病院と社会の中間施設の社会復帰施設の生活訓練施設援護寮で服薬管理・金銭管理・病気の受容・病気と障害の対処・制度の勉強・生活技術の習得・近所づきあいの仕方等訓練しました。私は病状が安定したときに、自分の処遇改善のことを医療者から聞き県知事にSAMの措置入院の処遇を解いてもらうお願いの手紙に、SAMの起こした他害行為の猛省したこと、今後の自分の病気と障害の共存・対処、服薬遵守、病院で病気と障害の治療に専念した事、もう社会復帰できるのではないかという事と、社会復帰にあたって生活訓練施設援護寮で訓練したい旨を書きました。措置解除の手紙を3回出しまして、3回目に措置解除になりました。私の主治医は措置解除擁護派でしたが、病院長は、医療保護入院にしました。私は再び医療保護入院の妥当性がない事を今度は山口県の精神医療審査会と人権擁護委員会に違法拘束を訴えました。この機関で医療保護入院の妥当性がない事を認められましたが、その後事務処理が病院でも県庁の健康増進課でも無視されほおっておかれてしまわれました。マスコミを動かし、読売新聞に平成1212月にこの問題と共に措置入院患者が私の病院に20年くらいから30年ずっと措置入院の患者が10人くらい居る事が掲載され、そのことが発覚しました。県は事務処理に多忙でSAMの医療保護入院から任意入院の手続きが遅れたと言い訳をしていました。新聞に掲載されると即座に任意入院になりまして、自分の希望通りの援護寮に退院後入所しました。もう20年前の話ですがこの当時、山口県は鹿児島県の次に都道府県民あたりの措置入院患者の比率が高かったです。その後人知れず、山口県の措置入院比率は全国平均以下になりました。

 

 私は、今回の施設襲撃者の彼の事はよく知りませんが、悪質で計画的で予告通りに事件を起こしています。明らかに警察の初動のミスではないかと思います。それと、この当事者が措置入院ということで、締め付けが厳しくなり、今回の法改正につながりましたが、事件の検証委員会に精神の当事者を入れて検討するべきではなかったかと思います。しかし、措置入院期間がたったの2週間で解除退院された事は、彼が精神の当事者とは信じられませんし、彼の主治医を精神科医としての真価を疑います。精神科医は当事者の拘束を決定実行できるので大変な社会的責務を負っています。しかし、事件を起こした彼が精神病でしかもたった2週間で措置解除退院できた事に私は疑いを持ちます。私は精神病を抱えて今年で36年になりましたが、措置期間が2週間な当事者は始めて見聞きしました。彼は精神病者というより健全者で優生思想を持つ人で何も罪のない障害者を殺傷した人ではないかと私は考えております。優生思想は排他的で特定な人を社会から除く考え方です。我々が目指すものはインクルーシブ(包括的な、共生的な)社会の構築です。なので、今回の精神保健福祉法の措置入院の改正は筋違いではないかと思います。

 

 私は今回の事件で、措置入院経験者=精神障害者=危険な人と考えてしまう差別意識がもっと怖い差別・偏見・汚名だと思います。この件に関しては、事件を起こした当事者が精神障害者は怖い人、もっと怖い人は措置入院当事者という図式を議会で論議されたこと、こういう事件を二度と起こさないためには措置入院当事者ひいては精神障害者は怖い何をするかわからない。−というような図式の措置入院当事者の誤った考え方だと思います。多くの措置入院経験者は、二度と措置入院にならないように服薬を継続して社会の中で静かに穏やかに質素に誠実に生きていますトップページに戻る