メンタルにゅーすヒエダ 「見えづらいひきこもり女性」 |
2017年10月2日 Vol.237 CIL(自立生活センター)下関発行 ピア・ハート下関(精神自助会) 編集 SAM TEL(083)-263-2687 FAX(083)-263-2688 E-mail
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石井志昂 | 『不登校新聞』編集長、不登校経験者 8/15(火)
11:00
国や自治体の実態調査では見えづらい「ひきこもり」がいる。
ひきこもっている女性である。そこで、ひきこもり女性だけの自助グループ「ひきこもりUX女子会」を運営する当事者団体「一般社団法人 ひきこもりUX会議」が、日本で初めての「ひきこもり女性実態調査」に乗り出した。
なぜ「見えづらい」のか?
2016年9月、内閣府が「若者の生活に関する調査報告書」のなかで「ひきこもりの若者はおよそ54万人いる」 との調査結果を発表した。
この調査のひきこもりの定義(調査対象者)に以下の文言がある。
「主婦・主夫、家事手伝いの者と統合失調症または身体的な病気がひきこもりのきっかけになった者を除く」
この定義について、複数のひきこもり支援団体から、多くのひきこもり女性は「家事手伝い」に含まれるため「事実上の調査対象外になることを意味する」と指摘されてきた(※)。
「働いていない」ことは当事者にとっても引け目を感じやすい。ひきこもりとしての苦しさを抱えながらも「家事手伝い」という言わば隠れ蓑で自分を隠したい女性が多いからだ。
さらに主婦でも「人と関わるのが苦しい」「働かなければいけないのに働けない」と、ひきこもりの苦しさを抱えている人がいる。
こうした点が調査でひきこもり女性が見えづらい背景として指摘されてきた。
ひきこもりUX女子会のようす
昨年6月、ひきこもり女性だけで構成される自助グループ「ひきこもりUX女子会」がスタートした。過去20回の開催で累計650名が参加したが、参加者の大半は国の調査では対象外だった可能性がある。
一方、国も見えづらい「ひきこもり」の存在は認識している。厚生労働省は「調査結果はすべてのひきこもりの実態を網羅したとは思っていない」との見解を示しているからだ。ただし「意図的に女性を排除した調査ではない」と調査を改める可能性は否定している。
日本初のひきこもり女性実態調査へ
ひきこもり女性は周囲から「働かなくても結婚すればいい」と思われるなど、その苦しさが伝わらずに孤立しやすい。
女子会に参加した30代の主婦は「自分の苦しさが夫を含め誰にも理解されず、どこにも居場所がなかった」と語っている。
ひきこもりUX女子会で使われたホワイトボード
現実には苦しんでいるひきこもり女性がいるなかでその実態を積極的に捉えようとする行政の動きがみられない。
こうした問題を踏まえて、女子会は日本初の「ひきこもり女性実態調査」に乗り出している(結果の発表は来年2月下旬予定)。
本調査では女子会参加者を中心に年齢制限を求めずに実施する。
調査の狙いは、国の調査から見えづらい「家事手伝い」や「主婦」であり、「ひきこもり状態」の人の実態を示すこと。そして、ひきこもり女性は何に苦しんでいるのかという「ひきこもりの苦しさの中身」を明らかにすることである。
同時に各地で女子会を開いてもらおうと、今年9月22日〜12月24日にかけて全国10都市で12回の全国キャラバンを展開、ブックレットも刊行する(※詳細は「ひきこもりUX会議ブログ」に順次掲載)。 http://blog.livedoor.jp/uxkaigi/
問題の本質に迫る実態調査をひきこもり女性が見すごされてきた理由は、国の調査が若者支援などを理由に表面上の枠組みに則って進められたものだからだろう。
そもそもひきこもりが社会問題化した90年代後半から国は「ひきこもりの定義」に揺れていた。上限年齢や疾病の有無など、その定義は現在に至るまで細かく変更され続けたが、そのたびに「対象からこぼれ落ちる存在がいる」とひきこもり当事者らは指摘してきた。
なぜこんな問題が起き続けたのかと言えば、ひきこもりは単なる年齢や属性で捉えれうるものではなく「苦しみの総称」だからだと私は考える。
ひきこもりは「怠けているだけだ」と周囲から蔑視される。ひきこもった背景のいじめ、就活失敗、DV、虐待など「ひきこもらざるを得ないほどの傷」には目も向けられない。さらにセーフティネットの薄さや女性への偏見など、さまざまな社会的な障壁が重層的に絡み合うことで、当事者は「生きていていいと思えない」(20代女性)と語るまで追い詰められてしまう。
こうした苦しさの中身を当事者から拾いだし、そこから見えるひきこもりの実態を捉えていかなければ、いつまでも問題の本質には迫れないだろう。
新たに実施される女子会の調査は苦しさの中身にも踏み込むという。国はこうした調査結果を踏まえ、現在の実態調査のあり方を検討すべきである。
※ 内閣府の調査については、40代以上のひきこもりも調査対象外となるため、当事者らが問題を指摘してきた。しかし、東京都町田市や秋田県藤里町など自治体レベルでの調査では40代以上も調査されており、女性に特化した調査だけがないのが現状である。
【編集後記】
ひきこもりは、1990年代、当初10代の男性に多いとされてきました。1990年10代なら、今彼らは現在50代前後の人も多いと思われます。行政も最近は、年齢制限をして支援をしています。年齢が上がっている30代、40代、50代を支援をしているのは、おそらく少ないだろうと思います。また、当初ひきこもりは男性に多いといわれていましたが、女性のひきこもりの存在も当事者から発信されてきています。どうしても女性は、家事手伝いという名目でひきこもりの調査から漏れてしまっています。
また、ひきこもりの定義が国の指針でころころ変わるのでひきこもりの当事者の確認が正確に取れていないのが現状です。今回引きこもりの第二弾として女性のひきこもりはいないのかなと検索をしていたら、本文に掲載されたものがありました。
国及び自治体は引きこもりの調査を、特に女性のひきこもりの調査をするべきです。また、年齢制限の支援体制を撤廃して、引きこもり者全体の支援や相談体制を行うべきです。ひきこもりの人たちは何かのきっかけでひきこもりをはじめたのだろうと思います。働いていないので、家族に養われ肩身の狭い思いをしている人は多いだろうと思います。それなら働きに出ればいいと健全な一般の人たちは多い意見と思います。私も、統合失調症になってひきこもりを10年くらい続けた経験があります。
ひきこもりのある定義では、「主婦・主夫、家事手伝いの者と統合失調症または身体的な病気がひきこもりのきっかけになった者を除く」とあります。精神病によるひきこもりとは区分けしても、主婦・主夫・家事手伝い人たちの中に引きこもっている人も居るはずです。それでは、国や自治体は何故彼らの実態調査を本気になってしないのか?私には分かりません。ただ引きこもりを抱える、家族が面倒を見るべきだとでも国や自治体は考えているのでしょう。引きこもりの人たち100万人とも150万人とも言われている現代病です。彼らの実態調査と支援を考えて下さい。