メンタルにゅーすヒエダ 「電気けいれん療法A(ECT)」 |
2018年8月20日 Vol.258 CIL(自立生活センター)下関発行 ピア・ハート下関(精神自助会) 編集 SAM TEL(083)-263-2687 FAX(083)-263-2688 E-mail
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ECTは重い精神障害の方に行われる治療です。
たとえば、重いうつ病や躁病あるいは緊張病(統合失調症のあるタイプ)などです。
普通、ほかの治療法ですべて効果が見られなかった場合や、以前にこの治療法でよくなった方に対して行います。
ECTでは、治療器からごく短時間、こめかみにつけた電極を通して電流が脳に流れ、発作(けいれん)を起こさせます。
「電気けいれん療法」と呼ばれる理由です。
慎重に行いますので、患者さんがけがをしたりすることはありません。
もちろん、麻酔薬と筋弛緩薬(筋肉の緊張をゆるめる薬)を使います。治療中は麻酔薬で眠った状態になります。
その間、けいれんが出ますが、20秒から50秒でおさまります。
治療そのものはECTセンターの専用治療室で行います。
治療回数は通常6〜12回ほどです。
ECTは、通常以下のような場合に適用されます。
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重いうつ病に苦しんでおり、薬物療法が無効ないしは部分的効果しかない場合。
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病気がもたらす深刻な苦痛で働けなくなった場合。
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抗うつ薬が試されたが、副作用がでてやめてしまい、ほかの治療法も効果がない場 合。
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食べることも飲むこともせず、生命を維持するための手段も拒否するため、生命が危険にさらされている場合。
ECTの前、6時間は食べたり飲んだりできません。麻酔を安全にかけるためです。
(Q3)ECTを受け入れるときのことを詳しく教えてください。
ECTを始める前に担当の医師がいくつかの検査を行って、安全な麻酔がかけられるようにします。次のような検査です。
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血液検査
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血糖値、腎臓と肝臓の働きを見る検査
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電解質
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胸のレントゲン(必要であれば脊椎のレントゲン)
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心電図
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頭部CT(必須ではありません)
看護師が、心臓の動きや血圧、血液中の酸素濃度などを測るための装置を患者さんのからだに取り付けます。
また、脳波を測定するために脳波計の電極を取り付けます。
酸素マスクをつけます。
点滴をして、そこから麻酔薬を入れます。
3〜5分で、眠ってしまいます。
麻酔薬で眠ったあとに筋弛緩薬が入ります。呼吸を助けるために酸素も使います。
寝入ったあと、患者さんのからだの緊張が消えたら、ECTを行います。
筋弛緩薬はすぐに(2〜3分で)効果がなくなります。
患者さんが麻酔から醒めた時にはすでに治療は終了しています。
目が覚めたことが確認されたらすぐに回復室に移り、30分ほど休んでいただきます。
回復室では看護師が血圧をはかり、患者さんに目覚めたときの様子をうかがいます。
そのとき酸素マスクをつけていることもあります。
血液の中の酸素濃度をはかるために指に小さなモニター(パルスオキシメーター)をつけます。
患者さんが目覚めるのに、しばらく時間がかかるかもしれません。
また、最初は自分がどこにいるかわからなくて混乱するかもしれません。すこし不快に感じることもあります。
30分もすればこれらは消えてしまいます。患者さんの状態が安定して病棟に戻りたいと感じたら、その日の治療は終了です。
通常、治療は開始から終了までおよそ30分から45分といったところです。
ECTの施行回数は多くて週に2〜3回です。
効果が出るまで3〜4回の施行を要します。
4〜5回の治療で顕著な改善が見られます。
治療終了までにどれくらいの施行回数を必要とするかは予測できませんが、平均6〜8回の施行が必要とされています。
患者さんによっては10〜15回実施することもあります。
15回行っても反応が見られない場合、ECTは無効と判断します。
(Q5)ECTはからだにどんな変化を起こしますか?
ECT治療器から伝わる電流は、脳のすべての神経細胞を一度に興奮させます。
その興奮が全身の筋肉を刺激しますので発作のように見えます。
この脳神経細胞の興奮が数種類の神経伝達物質を放出してうつ病や統合失調症を改善します。
抗うつ剤や抗精神病薬のように、
ECTはうつ症状をやわらげ、精神症状をコントロールします。
ECTは心臓や血圧に影響を与えますが、ECTを行った後の患者さんからの最も多い訴えは短期・長期記憶の喪失です。
これらは患者さんを悩ませる問題です。
(Q6)ECTはなぜ効果があるのですか?
ECTがなぜ効果があるのか、その理由はまだよくわかっていませんが、いくつかの理論が考えられています。
精神疾患が脳の化学物質(神経伝達物質)の異常によって引き起こされることは確かであるとされています。脳の神経伝達物質はわたしたちの正常な感情を調整する役割を果たします。
多くの精神疾患ではこの調整機能が不具合をきたしています。
ECTは神経伝達物質を放出させ、この調整機能の不具合を改善させると考えられています。
最近の研究によるとECTは脳のあちらこちらで血管新生を促すともいわれています。
(Q7)ECTの副作用はどんなものですか?
どんな治療にも副作用があるように、ECTにも副作用があります。軽度のものもあれば、もっと強い副作用もあります。
短時間で消失する有害作用
ECTの直後に頭痛・筋肉痛・めまい・嘔気・嘔吐・恐怖感・錯乱をみることがありますが、数時間以内に消失します。
ECTの直前・直後の記憶が一時的に失われることがあります(健忘)。
全身麻酔には危険な副作用がありますが、出現することはまれです。
深刻な副作用で死亡する場合もありますが、その頻度は5万回に1回程度で、出産に伴う死亡の危険性より少ない回数です。
長期間続く副作用
最も多い副作用は記憶喪失です。
ECTを受けた患者さん10人に1人くらいの割合で発生します。
最近のいくつかのできごとを忘れてしまいますが、ECTが全部終了して数週間たつと、失われた記憶がよみがえってきます。
この副作用にECTそのものがどれくらい関係しているのかは明かではなく、うつ病自体や他の要因が関係しているかもしれません。
患者さんによっては性格の変化が気づかれることもあります。
http://www.nha-seishin.or.jp/?m=255
【編集後記】
今回のメンタルにゅーすは現在の「電気けいれん療法(ECT)」について調べてみました。実は私の弟も精神病を44歳のときに発症しました。発症の頃は、会話も普通に出来ていましたが、今は抑うつ状態が酷いです。いつからECTをはじめたのか分かりませんが、1,2年この治療を行っています。状態は以前の弟から想像にできないくらいにガリガリに痩せて、精神状態もよくないです。弟の妻から時々電話が掛かってきて相談に乗ったりお話を出来るだけ傾聴に徹しています。
現在の電気けいれん療法は、麻酔をして筋弛緩剤を投与してから施術します。患者の負担は少なくなってきました。もともと脳に通電することで人為的にけいれん麻痺のショックを与える治療法で、1930年代ECTの創始者イタリアの医師ウーゴ・ツェルレッティ自身も後にECTの廃止を訴えていました。