メンタルにゅーすヒエダ

 

「電気けいれん療法後

人事不省」

2018年  Vol.261

CIL(自立生活センター)下関発行

ピア・ハート下関(精神自助会) 編集 SAM

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ネットで見つけた電気けいれん療法の結果人事不省になった家族の手記です。電気けいれん療法はネットで調べると安全安心で難治性の精神病に効果があると謳っています。果たして、悪い結果のリスクについて精神科医は、当事者・家族によく説明しているのでしょうか?医者が「貴方の家族のように難治性の精神病によく効く治療法がある。」とかの話に安易に乗らないほうがいいのでは・・・・・・・・

okada_9636さん                   2014/10/219:21:27

電気けいれん療法後、人事不省になりました。
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歳の妹の状況について質問します。妹は5年前よりうつ病でクリニックを受診。4年前に突発性難聴を発症して入院したのをきっかけに総合病院に転院しました。3年前と2年前に1回づつ休息目的で入院、去年にそれまでやっていた事務職を退職しました。7ヶ月前に3回目の入院。彼女の夫の話では、焦燥感から落ち着かず歩き回り身の置き場がないと訴え、全身に震えがあり発汗状態が続く状態だったそうです。入院後の1週間に3回電気けいれん療法(ECT)を実施したところ、携帯電話の操作ができなくなったと訴え、その後も電気けいれん療法が繰り返され、6回目のECT実施後、会話が全くできなくなり、表情が消失したそうです。その後のECT実施は家族の要請により中止されました。症状が改善されないため、遠方に住む私に相談が来て、2ヶ月前に本人と面会したところ、硬直した動作で食事・排泄などには促しと介助が必要、仮面様の表情で瞬きもせず、発声も全く無し。親しい人が来たことは認識したようで起き上がりはしたのですが、こちらの話しかけには反応しません。Yes,Noくらいが筆談でできるのが唯一のコミュニケーション手段です。主治医によると、うつ病による解離状態だが、これほど持続した例は経験がなくコミュニケートできないため打つ手がないとのことでした。各種検査で、脳の器質的な異常は見つからなかったそうです。先月、単科病院へ転院していますが、今のところ変化はないそうです。私の妻が統合失調症のため精神科にはよく出入りしていますが、これだけ急速かつ重篤に症状が悪化した話は聞いたことがありません。ECT(電気けいれん療法)の副作用という可能性はないのでしょうか?他にこのような症例は報告されていませんか?うつ病の重度の解離状態はこんなに長く持続するのですか?妹の例を見る限り、ECTは安易に選択すべき治療法ではなく、実施する時は慎重に行ってもらいたいと思います。

 ネットで調べると、よかった結果より悪い結果のほうが多いです。電気けいれん療法は、今では治療指針が厳しく決められています。電圧・電流、パルス波かサイン波など患者個人個人によって調整が出来るようです。素人のSAMですが脳に電撃を与えて脳細胞が破壊されることはないのでしょうか。60年前には、麻酔も筋弛緩薬も使われていなくて、心臓が止まったり、骨折・脱臼する患者さんもいたようです。そういう悪い事例や電気けいれん療法の寛解率、悪化率など私は目にしたことがありませんので各病院で隠蔽されているのかもしれません。

ある病院の統計データがありました。次に示します。

日本での報告は発見。
修正型電気けいれん療法(mECT)における有害事象-70例の検討
中村大介・筑波大 病院 精神神経科他
「危機的偶発症として,脈の触れない心室頻拍,高度徐脈,高度低酸素血症が各1件認められた(0.51%)。また,遷延性けいれん発作が5件認められ,〜術後の有害事象として,頭痛(45.7%),記憶障害(15.7%),もうろう状態(18.6%)

 

 次に、厚労省発表の電気けいれん療法のデータを示します。これは効果の表でなく電撃の実施回数の統計データです。

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この表は、厚労省のサイトに掲載されております表を、少々表示方法を変え、各都道府県の合計を求め、また、全国の総数を発表されている数を元に再計算した結果を記しています。この表の元表は、上記サイトの『第2部【データ編】のI精神科専門療法「都道府県別算定回数[44KB]」』に掲載されております。表中の「−」の読み方について
なお、先に挙げた表中には「−」という記載部分が多く、特に、外来でのその実施件数に関してはこの「−」という表記部が多くなっています。
私は、これを計算上は「0」と見なして、総数を出していますが、実際には、この「−」という表示は、「0」という意味ではなく、「不明」あるいは「無回答」と言うことで、実数が掴めていないと言うことである可能性も高く、表中の総数の数値に関しましては、参考程度に止めた理解としていただければと思います。

この表を見て、私が驚いたのは、外来において、手法を問わず、この電気けいれん療法を行っている医療機関があると言うことでした。この表には、精神科電気痙攣療法に、「閉鎖循環式全身麻酔」と言う方法「その他」という2種類の方法が記載されています。この表の数字を見たところ、近年は、麻酔医の立ち会いの下、全身麻酔をして行う「無けいれん電気療法」が主流になってきているとのことですから、恐らく、この厚労省サイトの表中の「閉鎖循環式全身麻酔」という手法が、これに当たるのかと思います。

そして、医学の専門知識のない私にはハッキリと断言はしかねるのですが、麻酔に似た薬によって全身麻酔したかのように完全に眠った状態で電気を流し、けいれんが実際に起こる従来から行われてきたタイプの電気療法が、「その他」に当たるのかなと解釈しました。あまり聞きたい話ではありませんが、昔、懲罰的に電気ショック療法という名で行われてきたものに近いものが、この「その他」に近いものではと感じます。しかし、現在は、無けいれん型でない、実際にけいれんの起こる電気療法であっても、薬を使って完全に眠った状態で行いますので、麻酔下で行われる電気療法と同じような状況下で、この「その他」の電気療法も行われていると、私は理解しております。                    

上記の表によると、外来において、「その他」の方法による電気けいれん療法を行っている医療機関があるということが非常に驚きでした。しかも、年間に3桁にのぼる件数を実施している県が3県もあることに、本当に驚きました。やはり麻酔ではないとは言え、施術後は多少のふらつきなどもありますし、外来で実施するような治療法かなぁという感じを受けました。もし、この「その他」の方法というのが、旧来の実際にけいれんが起こるタイプではない他の方法であるのであれば、多少は安心できますが。

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これは、上表の赤線で囲った部分である「入院」における電気けいれん療法の実施数について、グラフ化されたものです。このグラフは、厚労省サイトに掲載されているものを、そのまま抜粋して掲載させていただきました。

引用サイト:厚生労働省 第1回NDBオープンデータ

引用グラフ:第1部【解説編】の解説編(後編)[2,581KB]11ページに掲載。

このグラフを見ると、手法としては、ほとんどが、閉鎖循環式全身麻酔による電気けいれん療法であることが分かります。

そして、
・電気療法を行っていない都道府県というのは1つもない
・都道府県によりその実施数にはかなりのバラツキがある
つまり、ほとんど行われていない所から、年間2桁という県、東京のように1万件を超す件数を実施している所もあるということが分かります。近年は、うつ病の治療で、この電気けいれん療法を行うことも多いようで、以前は、電気と言えば「統合失調症(精神分裂病)」の人に対して行われるものというイメージが強かったように思いますが、
最近はこの辺りも変わりつつあるのかなと感じます。それにしても、人口が多いせいか、精神科の医療機関が多いせいか、その原因は分かりませんが、
東京都の実施件数のダントツの多さには、ちょっと驚きを隠せない
感じが致しました。

参考 統合失調症単純型のメッセージ 〜電気けいれん療法を受けて感じたこと〜  :雛月さん

       http://www.odayaka-mind.com/post-denki/

 

【編集後記】

 私は電気けいれん療法には否定的です。弟がこの施術でよい結果が出てないことが理由の一つです。電気けいれん療法で好結果が出た当事者、何の変化もない当事者、状態増悪の当事者と様々です。今回メンタルにゅーすでは3回続けて電気けいれん療法の特集をしました。好結果を得た当事者はラッキーだと思います。しかし、状態増悪した当事者も確かに存在します。電気けいれん療法の副作用で記憶障害、酷い頭痛もあります。希死念慮があったことも忘れてしまって、自殺者が減ったと言う報告もあります。希死念慮があったことも忘れてしまうような記憶障害があるとしたら、当事者の認知機能も低下してくるのではないかと思うのは私だけでしょうか?もともと自然界で電気けいれん療法を受けることはないので、私は今でも電気けいれん療法に強い疑いを持っております。それが良い結果よりも、悪い結果のリスクも正確に統計データを出すべきです。今回のニュースレターでは、電気けいれん療法の入院時・通院時のデータを掲載しました。寛解・増悪・変化なしなどのデーターは各病院で隠蔽されているのかもしれません。もともと、人工的に脳に電気けいれん療法を与えてよいものだろうかとSAMには疑問が残ります。電気けいれん療法に対しては、この施術をして良い結果もあったので広がったのだろうと思います。半世紀も前は、麻酔も筋弛緩薬も使わない施術の時期もありました。現在では50000回に1回くらいのリスクで、これは出産によるリスクより少ないと言う統計データもあります。難治性の薬も効かない、食事も取れない場合の当事者を診察する医者の苦労も分かります。厚労省が電気けいれん療法に対して治療指針を出しています。

実際に電気けいれん療法の治療が行われているので効果はあるのだと言うことは信じることは出来ます。しかし、私は電気けいれん療法に対して調べれば調べるほど不信感を持ってしまいます。電気けいれん療法は治療効果の出る当事者は、早い人で3,4回、7,8回、12,13回など1週間に3回1クルーで3から6クルー行うみたいです。報告によると15回以上電気けいれん療法を続けても効果の出ない場合はやめると言う精神科医もいます。私は、弟のことで電気けいれん療法の否定的な意見を述べましたが、好結果を得た当事者もいます。電気けいれん法が麻酔薬・筋弛緩薬を使うことで安心安全に施術できるようになったことは、当事者の恐怖感は減少しましたが、この施術を行うのはよーく説明を受けてください。施術は当事者・家族がやめたいと言えばいつでもやめることができます。早めの見極めも大切ではないかと思います。

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