メンタルにゅーすヒエダ 「デポ薬」 |
2018年月日 Vol.265 CIL(自立生活センター)下関発行 ピア・ハート下関(精神自助会) 編集 SAM TEL(083)-263-2687 FAX(083)-263-2688 E-mail
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持効性抗精神病薬注射剤(デポ薬・デポ剤)のさじ加減(医師)
こころの元気+ 2014年11月号より
ちょうどよい薬の量のはなし さじかげん よいかげん
第7回
持効性抗精神病薬注射剤のさじ加減
─安全な使用のために─
渡邉博幸
千葉大学社会精神保健教育研究センター
治療・社会復帰支援研究部門
今回は、「持効性抗精神病薬注射剤(デポ剤とも呼ばれるが、ここではデポ薬とする)」のお話をします。
デポ薬には、定型薬としてデカン酸ハロペリドール、デカン酸フルフェナジンがあります。また、非定型薬としてはリスペリドンLAI、パリペリドンパルミチン酸エステルがあります。
デポ薬は、薬効成分が長時間筋肉内に留まり、一定の量で血液中に放出されるように溶剤を工夫し、2〜4週間という治療効果の持続が可能です。
デポ薬のメリット、デメリット
デポ薬のメリットは、内服薬の量や回数を減らしたり、まったく0にして、服薬のわずらわしさから開放されること、薬の中断による症状悪化をかなり避けられることです。また最近では、肝臓の代謝を経ず、体内の薬の濃度を一定に保てることから、同程度の効果を発する内服薬に比べて副作用を減らせる可能性もあります。
しかしデメリットもあります。まず注射部位の痛みです。注射が苦手な人や不安の強い人はこの治療法を望まないかもしれません。また、長い期間筋肉中に留まり、内服薬のように途中で中止ができないので、副作用が出ると対処がむずかしくなります。
必要な準備と使用を避ける状況
このようなリスクを避けるために、デポ薬導入にあたっては事前にいろいろな準備が必要です。
@注射薬と同じ副作用プロフィールをもつ内服薬、できれば同じ薬をのんだときの副作用の有無を把握しておく。
A導入前の血圧・脈拍・体温測定と心電図検査。
心循環系の副作用は、急激に起こり、命に関わるからです。
B血液検査(肝機能・腎機能・血糖値など)。
デポ薬だけに限りませんが、患者さんにとって新しい治療を導入するときは必ず行う必要があります。
以上から、患者さんの協力と事前の身体状況の把握・検査を必要とするデポ薬は、服薬履歴や発症の背景が不明の初診患者さんや、体調・精神症状の変動のはげしい急性期に、強制的に用いる薬ではありません。ましてや、意識状態のはっきりしない方、重篤な身体疾患の合併、脱水・低栄養・発熱・疲労などで、体のコンディションの悪い方には導入を避けるべきです。
デポ薬のメリットが生きるのは、安定・維持期に入り、普段の薬は少量で維持できているが服薬を忘れがち、あるいは何かの事情で服薬が続けられず、症状をぶり返すタイプの方です。
デポ薬のほどよい量は?
デポ薬導入の安全性を高めるために、私は、初回は最少量(アンプルの半分、場合によっては4分の1程度)から始めます。1回で内服量と同等の効果を期待できる高用量には置き換えません。内服薬では安全でも、注射ではどんな反応がでるかわからないからです。そして導入当初は1〜2週間の間隔で診察し、精神症状の変動、副作用の出現をモニターしながら2週間ごとに注射量を決めていきます。
一般的に、デポ薬は同じ種類の内服薬に比べ少量で効果を発揮します。
注射量は、内服薬・注射薬合わせてもクロルプロマジン換算※で600rを超えないように心がけます。
内服薬ですでに1000rを超える方は、できるだけ慎重に減量を試み、600rを切ってからデポ薬導入をお勧めします。
デポ薬の薬理学的な利点を生かすには、慎重な導入計画や切り替え計画が必要です。
状態が不安定、身体背景の情報が乏しいときは避ける、内服から一回で切り替えるような急激な方法はとらないといった細心の注意は、非定型デポ薬でも守るべきだと考えています。
※クロルプロマジン換算(CP換算):薬は種類が違えば同じ量でも強さが違うため、抗精神病薬の場合、クロルプロマジンという薬に置き換え(等価換算し)、薬全体の量が適切かを判断する。なお、換算値が約600mgをこえると副作用が出やすくなるといわれる。
渡邉博幸
千葉大学社会精神保健教育研究センター
治療・社会復帰支援研究部門
profile わたなべ・ひろゆき●千葉大学医学部附属病院で精神科医としても働いています。好きな音楽は泉谷しげる。お餅、お団子、ご飯類など炭水化物が好きで困ります。
【編集後記】
SAMはデポ薬を使ったことはありません。15年間状態が安定しませんでしたし、病識がなかったので今思えば恐ろしいことですが自分で勝手に薬の量を調整していました。今日は調子がいいからは半分、4分の1とか自分で服薬量を調節していました。
生活訓練施設援護寮ヒエダに入所してから病気と障碍、薬の勉強をしていましたら、自分はなんと恐ろしいことをしていたなと思います。統合失調症の第一選択治療は服薬です。薬の勉強をしていましたらそれまで、薬のありがたみを馬鹿にしていたことに気づきます。服薬は再発予防と状態の安定化の効能があります。薬は毎日肝臓で代謝しています。なので状態の安定、再発の予防には薬の血中濃度がある程度一定のほうがいいのではないかと思います。それで、薬の勉強をした後からは、毎日服薬のたびに自分が統合失調症の確認になりますが順守していました。SAMは一度服薬を守らず断薬して措置入院になりましたので、二度と措置入院になって家族や他人に迷惑をかけないように服薬の順守を心がけています。服薬は、そのたびに自分が統合失調症の確認になりますが、慣れるとお守りのつもりで順守しています。断薬して調子を崩すと入院になり、その期間が無駄になるので今では服薬をきちんと守って社会生活をしています。
服薬は短い期間では効いているのか効いてないのかと思っていましたが、毎日をイライラせず社会生活できていますので有り難いことです。
デポ薬は、服薬でなくてお尻に注射します。4週間ごとに注射をするために通院しないといけませんが、服薬を忘れて調子を崩す人にはいい治療法かもしれません。使用するまでには、安定期なことと血液検査、少量ずつの使用しながら完全移行するようになっています。服薬を忘れて不規則になり調子を崩す人には4週間に一度の注射になりますので、毎日の服薬と比べたら楽かもしれません。しかし服薬をしなくなったから病気が治ったわけではありませんので定期的に病院に通院してデポ薬の注射をしなければなりません。それと人によりますがやはり注射ですので痛いそうです。