メンタルにゅーすヒエダ 「統合失調症が 発症する要因とは?(遺伝A)」 |
2019年7月18日 Vol.277 CIL(自立生活センター)下関発行 ピア・ハート下関(精神自助会) 編集 SAM TEL(083)-263-2687 FAX(083)-263-2688 E-mail
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遺伝、環境が要因 ネットより参照
統合失調症は、遺伝が関与しているのは事実です。統合失調症が怖い病気だと思われているのは、遺伝するという点にあると思いますが、100%が遺伝するというのではありません。
遺伝は、様々に考えられている要因の一つに過ぎません。また、特定の一つの原因があるというわけではなく、複数の要因が重なった結果発症すると考えられています。
遺伝の確率
我が国の統合失調症の患者数は80万人だといわれています。全体の人口の中で0.7%を占めています。ざっと100人に1人弱の人が発症するというのは、結構、頻度の高い病気です。
では、その中で遺伝による要因は、どのくらいでしょうか。
親、兄弟が統合失調症
統合失調症の患者を対象とした調査では、以下のような結果が報告されています。
・親の片方が統合失調症であった場合、子どもが発症する確率は10%。
・両親がともに統合失調症であった場合、子どもが発症する確率は40%。
・統合失調症の兄弟姉妹がいた場合、当人が発症する確率は約10%。
一方で、こんな調査報告もあります。
・統合失調症の患者さんの家族のうち、両親の約9割は統合失調症ではない。
・統合失調の患者さんのうち、兄弟を含めてもその約8割は統合失調症ではない。
・統合失調症の患者さんのうち、甥や姪を含めても約6割は統合失調症ではない。
一卵性の双子
一卵性双生児の遺伝子は100%同じですから、一卵性双生児の発症率を調べると、遺伝との関係が明らかになります。調査の結果は、一卵性双生児の片方が発症すると、もう一人に発症する確率は50%です。
この数値が示すのは、統合失調症では、遺伝の要因が高い。しかし、遺伝以外の環境要因もまた無視できない、ということです。
環境、ストレスがきっかけ
発症の要因は、実はよくわかっていません。卒業、就職、結婚などの人生の転機がきっかけで発症するケースがしばしばみられます。
生活環境がガラリと変わって、ストレスや不安などがたまり、それがきっかけになることも事実ですが、人生の転機を経験したすべての人が発症するわけでもありませんから、これは発症の要因の一つに過ぎない、ということです。
ストレス耐性も要因に
統合失調症は、いくつかの危険因子が重なって発症すると考えられています。遺伝のほかに人間関係を中心にした社会環境、家庭環境、あるいは脳の変化など、強いストレスにさらされたときに発症するケースが多いようです。
そうすると、それらのストレスにどれだけ耐えられるかが問題となってきます。その人の性格という次元を超えて、その人が持っているストレス耐性が脆弱であると、発症する確率が高くなると考えられています。
発症しないためには
統合失調症の予防の決め手というのは、残念ながらありません。とはいえ、塩分控えめの食生活によって高血圧を抑えることができるように、統合失調症の発症を抑える有効なリスク対策というのはあります。
ストレスの少ない環境を
対策のポイント1は、過剰なストレスをなるべく避けるような環境を作るということです。対策のポイント2は、発症した場合の対応を考えておくことです。
統合失調症は、早期発見・早期治療によって、大きな後遺症を残すことなく回復し、社会復帰したというケースが少なくありません。症状のあらわれ方の項でふれた<前兆期>に治療を始めると、治療効果が高いといわれています。
地道な治療で問題はなくなる
統合失調症の治療は、薬物療法と精神療法や生活技能訓練などのリハビリなどを含む心理療法の二本立てで行われます。この二つは、車の両輪のようなものですが、幻覚や妄想が強い急性期では、薬物療法をきちんと行うことが重要です。
入院の必要も
治療の進歩で、外来での治療も増えてきましたが、どうしても入院が必要だ、というケースもあります。医者の立場にたつと病状が把握しやすく、検査や的確に薬物の調整ができる入院が望ましいのですが、患者さんの事情というのもあります。
外来にするか入院にするかの目安は、以下の点が基準となっています。
・患者さん自身が、入院することによって得られる休息を希望している。
・幻覚や妄想が激しく、日常生活に支障をきたすようなケース。
・病識の障害などで、自分が病気だと認めたがらず、服薬や静養など、治療に必要な最低限の約束を守れないようなケース。
治療は長期的
統合失調症では、薬物療法を中心にした長期的な治療が行われます。治療の期間は個人差がありますが、年単位の地道な治療です。回復の仕方も人によって異なってきます。
忘れてならないことは、服薬をやめると再発したり、以前よりも病状が悪化することがあります。ですから、自分勝手に薬を減らしたり、服薬を中断するのは危険です。
服薬を中断する理由として、副作用があげられますが、副作用への対処は織り込み済みです。仮に副作用がでるということであれば、医師と相談して、場合によっては薬を切り替えるということもありますが、いずれにしろ服薬を継続することが重要です。
遺伝はあくまで要因の一つ
一見すると遺伝が関係しそうに思われる精神疾患をみてきましたが、これらの疾患ではいずれも遺伝は、数ある発症要因の一つにすぎません。むしろストレスや環境からの負荷の影響が大きいとされています。
遺伝よりも環境を気にすべき
統合失調症は、その他の精神疾患よりも遺伝的影響が大きいことは事実です。しかし、遺伝以外の環境要因が大きいことも、また確かな統計的事実です。
統合失調症は、遺伝によってもたらされる不治の病ではなくなってきています。実際、医療の進歩によって多くの患者さんが、社会復帰ができるようになってきているのです。であれば、万病のもとである環境を改善し、万が一発症したら、回復の可能性が高い早期治療に取り組むことが重要です。
「編集後記」
遺伝については、SAMは意識的にメンタルにゅーすの紙面に掲載することはしませんでした。家族や親族に要らぬ心配をかけないように配慮していました。しかし、最近SAMは、自分の弟が統合失調症だということが分かりました。一番下の妹は、健常者です。家族・親族に、統合失調症に罹患している場合、罹患するリスクがありますので、それを踏まえて生きていく事をしたほうがいいと思います。統合失調症は遺伝する事を心配しますが、家族・親族に統合失調症を持った人がいない健常者の家族・親族にも発病することがあります。ですので、誰もが統合失調症を発病する可能性が1パーセントはあります。健常者の皆さんも気をつけて生活してください。ストレスをためない事、規則正しい生活、睡眠を十分とるなど各自がそれらに注意して生活するだけで、発病のリスクが下がります。家族・親族に、統合失調症を抱えた人がいる場合、発病することがありますので気をつけてください。特に毎日残業が続いたり、休日出勤する人たちはプライベートとオフィシャルを分けて切り替えて生活してください。SAMの家族も弟は43歳で統合失調症を発病しました。彼は、SAMが統合失調症を発病したときに、SAMにかなり差別・偏見を持っていました。弟は自分には無関係と思っていたのでしょう。しかし、兄であるSAMが統合失調症を発病しましたので、もしかして自分にも発病のリスクがあるかもと考えてはいなく、自分には無関係の病気と思っていたのでしょう。
統合失調症は遺伝だけでなく、健常な家族・親族の中にある日突然出現します。それなので健常者も自分にも無関係の病気と考えず、あせらない・がんばらない・むりしない事を踏まえて、生活・仕事を送ってください。統合失調症は、15〜30歳の間に発病の頻度が高いです。この時期以外の40代50代の人も発病する場合もあります。SAMも、そういう人を見聞きします。そういう人に限って、自分には無関係の病気と考え、当事者の差別・偏見・汚名の高い人が多いです。統合失調症は誰でも罹患する病気なのです。そして異変を感じたら、精神科の門をたたきましょう。早期治療が重度化を防止します。