メンタルにゅーす

ヒエダ

Vol.332

「てんかん」

2021年1120日  Vol.332

CIL(自立生活センター)下関発行

ピア・ハート下関(精神自助会) 編集 白夢(SAM

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E-mail  s-cil@feel.ocn.ne.jp

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 てんかん

てんかんは、突然意識を失って反応がなくなるなどの「てんかん発作」をくりかえし起こす病気ですが、その原因や症状は人により様々で、乳幼児から高齢者までどの年齢層でも発病する可能性があり、患者数も1000人に5人〜8人(日本全体で60万〜100万人)と、誰もがかかる可能性のあるありふれた病気のひとつです(1)。「てんかん発作」は、脳の一部の神経細胞が突然一時的に異常な電気活動(電気発射)を起こすことにより生じますが、脳のどの範囲で電気発射が起こるかにより様々な「発作症状」を示します。しかし症状は基本的に一過性で、てんかん発作終了後は元通りの状態に回復することが特徴です。原因は様々で、脳腫瘍や頭部外傷後遺症などの明らかな原因がある場合は「症候性てんかん」、原因不明の場合は「特発性てんかん」と呼ばれます。治療は適切な抗てんかん薬を服用することで、大部分の患者さんでは発作は抑制され通常の社会生活を支障なくおくれます。一方、抗てんかん薬では発作を抑えることができず、「難治性てんかん」として複数の抗てんかん薬の調整や外科治療などの専門的なてんかん治療を必要とする場合もあります。

 

【参考文献】

(1)大塚頌子、赤松直樹、加藤天美、他:日本におけるてんかんの実態 日本のてんかん患者数の推定、てんかん研究273号:408-4112010

 

「てんかん」とは

脳の神経細胞(ニューロン)は、その数は数百億ともいわれますが、基本的に電気的活動を行っているため、強い電気刺激により異常で過剰な電気活動(電気発射)を起こす性質があります。「てんかん発作」は、このニューロンの電気発射が外部からの刺激なしに自発的に起こる現象を指し、また「てんかん」は、この「てんかん発作」をくりかえし起こすことを特徴とする病気です。

てんかんは、原因が不明な「特発性てんかん」と、頭部外傷、脳卒中、脳腫瘍、アルツハイマー病など原因が明らかな「症候性てんかん」に分けられ、前者が全体の約6割、後者が残りの約4割を占めるとされます。乳幼児から、小児、学童、思春期、成人、高齢者のいずれの年齢層でも発症しますが、特に小児と高齢者で発症率が高いといわれています。

重症度は千差万別で、小児期に発病し数年に一度程度の発作で成人になれば完治してしまう良性の特発性てんかんがある一方、頻繁に発作をくりかえし様々な脳機能障害が進行する難治の症候性てんかんもあります。しかし全体としては、2/3から3/4の患者さんは抗てんかん薬の服用で発作は止まり、大半の患者さんは支障なく通常の社会生活をおくることができます(2)。また薬で発作が抑制されない場合でも、海馬硬化症や良性の脳腫瘍などのはっきりした病変がある場合は、手術で発作の完治を期待することもできます。

 

【参考文献】

(2Brodie MJ, et al.: Patterns of treatment response in newly diagnosed epilepsy. Neurology 78(20):1548-1554,2012

 

てんかんのサイン・症状

「てんかん発作」の症状は、脳のどの範囲で異常な電気発射が起こるかにより多彩です。たとえば脳の一部で起こる発作(部分発作)では、後頭葉の視覚野で起これば光がチカチカ見える、手の領域の運動野で起これば手がピクピク動く、側頭葉で起これば前胸部不快感や既視感など、患者さん自身が感じられる様々な症状を示します。一方電気発射が脳全体に広がった場合、意識を消失し動作が止まって応答がなくなる、倒れて全身を痙攣させるなど、患者さん自身は発作の間意識がなくなり周囲の状況がわからない状態となります。また、体の一部あるいは全体が一瞬ピクンと動くミオクロニー発作や、突然体の力が抜けバタンと倒れる脱力発作、あるいは手足や口をもそもそと動かす自動症といわれる発作などもあります。

 

てんかんの診断と治療

てんかんは、一旦診断されるとその後長期間服薬を必要とすることが多いため、初期診断で、本当にてんかんなのかどうか、ほかに治療が必要な原因はないのかを見極めたうえで、長期的な治療の見通しを立てることが大切です。小児の良性てんかんでは発作症状などの病歴の聴取だけで診断が可能なこともありますが、てんかん発作をくりかえし起こす場合には、基本的に脳波とMRI検査を行い、てんかんの診断と原因を確認する必要があります。

発作で意識が消失することは、患者さんにとって社会生活上最も大きな障碍となる症状で、事故にあう危険はもちろん、就労や就学、あるいは自動車運転などに際し大きなハンディキャップとなります。従っててんかんの治療は、発作をいかに消失させるか、あるいは意識消失を伴う発作の回数をいかに減らせるかが主要な目標となります。具体的な治療方法としては、抗てんかん薬の調整が主ですが、自己判断で薬を中断しないことが、発作を防ぐうえで重要です。また、中には先に述べたとおり外科治療で完治を期待できる場合もあり、早期に適切な診断を行うことも大切なことです。

 

てんかんをもつ人へのケア

てんかんをもつ人にとって、発作が起こっている時間は通常数秒から数分間にすぎないため、発作が起こっていないその他のほとんどの時間は普通の社会生活をおくることが可能です。従って、病気の特性を周囲の人がよく理解し、過剰に活動を制限せず能力を発揮する機会を摘み取ることのないよう配慮することも、てんかんをもつ人に対するケアを行う上で大切なポイントです。

またてんかんをもつ人は、小児では発達や就学、成人では就労や自動車運転、女性では妊娠と出産など、生活上のさまざまな問題に対する継続的なサポートを必要としています。また発作の止まらない患者さんでは、くりかえすてんかん発作による脳機能障害や心理・社会面の障碍に対するケアも重要で、様々な福祉制度を活用することも求められます。

厚労省の研究班(てんかん診療ネットワーク:http://www.ecn-japan.com/)や学会及び患者会組織(日本てんかん学会:http://square.umin.ac.jp/jes/、日本てんかん協会:http://www.jea-net.jp)のウェブサイトからは、てんかんに関する情報を得ることができます。

てんかん|病名から知る|こころの病気を知る|メンタルヘルス|厚生労働省 (mhlw.go.jp) 厚生労省 「みんなのメンタルヘルス」参照

 

てんかんに特有の合併症は?

てんかん患者さんに特有の合併症は、原因によって以下の3つに分けられます。

 

てんかんの原因である脳の障害による症状

脳の障碍のある部位により、運動の障碍、知的障碍、言語障碍がみられることがあります。特に、症候性全般てんかんには知的障碍を認めることがありますが、それは脳の障碍のためにてんかん発作と知的障碍が起こっていると考えることができます。一方、特発性てんかんでは一般的に知的障碍を認めません。

 

発作に直接関係した症状(精神症状)

発作が起こる前に怒りっぽくなるなどの症状や、発作の症状として精神症状があらわれることがあります。精神症状の多くは複雑部分発作の際にみられます。さらに、発作後に不安感や興奮状態などがみられることもあります。

 

てんかんに関連した精神症状

意識障碍              意識が変わる(意識変容)、もうろうとする、意識が混濁する

感情障碍              不機嫌になる、怒りっぽくなる

性格変化              まわりくどくなる(迂遠、冗漫)、しつこくなる(粘着性)

精神病様状態       幻覚がみえる、妄想てきになる

行動異常              無意味な動作を繰り返す(自動症)、異常な行動、暴力的、犯罪

てんかんであることによる二次的な症状

 

多くの患者さんは心理的な負担、あるいは社会生活で問題を抱えており、それらに基づく不安、絶望、消極、孤立、逡巡、敏感、防衛、不幸せ感などから、うつ病などの精神的な問題を引き起こす可能性があります。

 

発作と直接関連しない症状(性格的特徴)

発作とは直接関連しませんが、てんかん患者さんに多い性格的特徴として、粘着性が高い、物にこだわりやすい、回りくどい話し方をする、などがあげられています。これは、発作を繰り返すことで脳に影響した結果と考えられています。しかし、最近は早い段階から治療を始めるので、このような性格はほとんど見られなくなりました。

 

てんかんの性格の特徴

話題の流動性が乏しく、遅くなる

まわりくどい話し方をする

几帳面で細かなことに固執する

融通が利かなくなる

ささいなことで怒り出す

https://www.tenkan.info/about/epilepsy/about_07.html?yclid=YSS.EAIaIQobChMI0KC4qJaT7wIVjH0rCh2xrgZsEAAYASACEgKkjfD_BwE  「てんかんINFO」 参照

【編集後記】

 てんかんは1000人に78人が罹患するといわれます。統合失調症は100人に1人が罹患するといわれます。日本にはてんかんが60から100万人、統合失調症は130万人がいます。どちらもありふれた誰でも罹る可能性がある病気です。私には知り合いで、てんかんの人がいます。薬を飲んでいますが一人で外出ができないと言っておられました。自分の周りには身体・知的・精神・難病などに知り合いがいます。健常者と思っていた人が病気を抱えて生きているのを知ると、自分だけが苦しいのではない周囲の人も何かの病気を抱えて生きているのだといつも考えています。わたしは生まれ故郷のS市で当事者同士交流がないとき、自分だけが一番苦しいと考えていました。下関に移住して様々な障碍の当事者に合うと、白夢も頑張らねばと思います。人間生きていれば何か病気や障害、問題、トラブルを抱えているものです。私一人だけが苦しいのではないと実感します。だから私も、頑張ると調子を崩すのでほどほどに生きてきたいなと思います。人間誰でも何かで苦しみ悩んでいます。それらを抱えて私も生きていく見本にして、統合失調症と共に対処していく所存です。

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