メンタルにゅーすヒエダ Vol.370 「妄想を訴える人にはどう関わればいい?」 |
2023年9月15日 Vol.370 CIL(自立生活センター)下関発行 ピア・ハート下関(精神自助会) 編集 白夢(SAM) TEL(083)-263-2687 FAX(083)-263-2688 E-mail s-cil@feel.ocn.ne.jp URL http://blog.livedoor.jp/npo_light/archives/cat_8979.html |
「手を繋いだカップル
妄想は、日常でよく見られる精神疾患に伴うことが多く、患者さん本人に妄想が病気の症状であるという認識がないことから、どう関わり対処すればよいのか悩む方は少なくありません。ここでは、妄想を持つ患者さんへの対処法を紹介します。
妄想は否定しない
妄想の内容が非現実的なものでも、あからさまに否定することは避けます。妄想を持っている本人は、時に現実以上にその妄想に確信を持ち、リアリティを感じているため、その妄想を否定する人に不信感を抱きます。患者さんはその妄想によって日常生活にも影響を受け、苦しめられていることがあります。訴えをよく聞き、「辛いね」「大変だったね」などと、妄想による不安や苦しみに共感することが大切です。さらに、妄想を持ちながらも、何とか日常生活に取り組んできた努力を、「よく耐えてきたね」というように、支持してあげることもいいでしょう。また、「変わったことや、困ったことがあったら、何でも言ってね」と声をかけ、患者さんを安心させることも効果的です。妄想を否定してしまうことで、患者さんはこの人には言っても仕方がないと、訴え自体を諦めてしまうことがあります。そのため、患者さんの精神状態を把握するためにも、妄想を否定せず、話しやすい関係を保っておく必要があるのです。
妄想の内容には同意しない
妄想は否定してはいけませんが、その内容に同意したり肯定したりする必要もありません。例えば「みんなが私に嫌がらせしている。」と被害妄想を訴える患者さんに「その通りだよ」と言えば、妄想についての確信やこだわりを強めてしまうことになりかねません。妄想に伴う苦しみには共感するが、その内容が事実かどうかは自分には分からない、といった中立的な姿勢が望ましいでしょう。
妄想が事実でないことを一緒に確かめる
患者さんが訴えている妄想は事実ではありません。そのことを一緒に確かめることで、患者さんの妄想が一時的に解消されることがあります。例えば、「財布を盗まれた」と訴えている人には「一緒に探しましょう」と声をかけ、財布を探し、盗まれていないことを確認します。妄想に基づく不安に寄り添い、一緒に確かめてくれる人がいることに、患者さんは安心感を持ちます。ただ、大抵の場合は、妄想の不安が一時的に和らいでも、訴えは繰り返されます。さらに、患者さんは自分の妄想を証明するために、数知れない「根拠」を示そうとするように見えることがあります。それら全てにいちいち対応しようとして、ご家族や周囲の方が疲れてしまうことは、患者さんとの関係の上でもよくありません。患者さんを安心させようとして無理し過ぎないほうがいいでしょう。
治療を促す
妄想を抱いている患者さんは、その妄想が病気によるという認識がないことがほとんどです。しかし、患者さんは妄想に伴って不眠や不安といった何らかの精神的な不調を感じていることがあります。患者さんは妄想を否定されることを嫌がりますので、妄想それ自体の治療というより、妄想に伴う患者さんの症状や困りごとに焦点を当て、周囲が援助を提案することが大切です。周囲の提案に従い、患者さんが受診して服薬に応じた場合には、患者さんは以前より楽に過ごせるようになることが多いものです。その結果として妄想に対するこだわりが和らぎ、妄想に距離を置けるようになるのです。それでも病識は不完全で、服薬のメリットについても曖昧な認識に留まってしまうことが少なくありません。そのため、通院を途中でやめてしまったり、薬を勝手にやめてしまい、病気が再発したり、悪化することがよくあります。また、患者さんは妄想を抱いていることで、周囲に不信感を持ちやすく、被害的になりがちなものです。そのため、周囲の提案に従って通院し、服薬することは、患者さんにも大きな勇気や努力を必要とするものなのです。服薬によるメリットを本人に指摘し、治療への患者さんの努力を支持、賞賛することで、治療の継続を援助しましょう。妄想の治療にあたっては、妄想自体を否定するのではなく、妄想に伴う患者さんの症状や苦痛の軽減を念頭に置いた、粘り強い周囲の関わりが大切です。」
カッコ内引用
ネットより引用
統合失調症やうつ病などの精神疾患で起こる症状である「妄想
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https://www.ishamachi.com/?p=27813
【編集後記】
妄想は、患者さんご本人だけでなく、ご家族や周りの方々が振り回されることが多い症状です。また、妄想を引き起こす病気は、大半の場合で、治療が長期化します。そのため、身近にいるご家族が疲れてしまうこともしばしばあります。患者さんの治療を援助していく上で、ご家族や周囲の人たちが無理のない適切な関わり方を考え、工夫していくことが重要です。
2016/9/6公開 2018/5/21更新
休養と薬物治療でしっかり治そう。うつ病の治療方法とは
参考文献
武井麻子ら(2009)、系統看護学講座 専門分野U 精神看護学1 精神看護の基礎、医学書院、p.123
武井麻子ら(2009)、系統看護学講座 専門分野U 精神看護学2 精神看護の展開、医学書院、pp.2-17