メンタルにゅーすVol.63

 

メンタルにゅーすヒエダ

 

私のスタンス

 

2010年  Vol.63

CIL(自立生活センター)下関発行

ピア・ハート下関 編集 SAM

Tel(083)-263-2687

FAX(083)-263-2688

E-mail  s-cil@feel.ocn.ne.jp

URL  http://members.jcom.home.ne.jp/s-cil/

 私は、CIL(自立生活センター)下関の一員として、全国に120位あるCILの僅かな精神の当事者職員の一人でありピアカウンセラーです。私が、把握している限りでは、数人の精神の当事者職員が確認できています。これらのCILの中には、東京や大阪に多いようですが、国や行政と交渉する華やかな表舞台の精神の当事者達がいます。彼らは、いろんな制度交渉で国に精神障碍者が生活しやすいように話し合いをしています。

私は行政や国との交渉、障碍者運動、ピア・カウンセリングの普及もしていません。

私は、9年近く、CIL下関で働いています。どんな仕事をしているかと言うと機関誌「ネイチャー」・精神関係の「メンタルにゅーすヒエダ」などの編集、CIL下関の事業費の捻出(財団へ助成申請の企画の検討)、他団体機関誌担当、ホームページの管理(ネイチャー、メンタルにゅーすヒエダ)、自助会の開催、相談業務、こまごまとした仕事(スモールジョブ)、など定型的な仕事を任せられています。仕事を上司から頼まれるときは、病気と障碍のせいで臨機応変な行動が取れないので予めかなりの時間的な余裕が必要です。それで、上司になるべく早く仕事の指示を御願いしています。

私は、病気と障碍を持った精神障碍者の生活に目を向けて仕事をしています。それは、ニュースレターの形で皆さんにお伝えしています。そういった仕事を何故しているのか。皆さんは疑問をお持ちでしょう。それは、私が病気や障碍のせいで幻聴と妄想がマックスパワーで生じてしまい、対人関係が上手くできないからなのです。残存した幻聴と妄想が私のバリアになっています。そのような実体験に基づき、私は精神障碍者の生活を視点にして、病院や施設では教えてくれない残存した症状・障碍などの対処の仕方、自立生活のノウハウ、制度利用の仕方など今ある制度を利用して生きていく術(自立生活プログラム)などを仲間に伝えていくために「メンタルにゅーすヒエダ」を編集しています。また、私はそういった縁の下から皆さんを支える仕事が自分には似合っていると考えるからです。私は、自分自身を教材として、統合失調症の自分が社会復帰していく中で、出会い・考え・感じ・工夫して学んだ様々なエピソードを振り返りました。私は社会復帰していく中で自立生活のノウハウを日々記録に残し当事者として仲間同士で共有することを考えました。もう一つ、私は統合失調症の罹患者としての経験で、当事者の気持ちを共感して、当事者のピアサポートをしていきたいと考えるからです。「当事者の気持ちは当事者から」と言うのが私の信念です。CIL下関の事務所に少しずつ精神の当事者が相談に訪れるようになりました。最近、当事者のお話に傾聴できるようになりました。「ピア・カウンセラーは傾聴することが大事ですよ」と代表のKが何度も私にアドバイスしてくれたことがよーく分かるようになりました。

 私は、たまたま病院を退院し自立生活をして結婚することが出来ました。今現在、34万人くらいの精神の当事者が病院に入院しています。このように話していると私は施設、病院、国などが一方的に悪いといっているように勘違いされそうですが、そう言っているのではないのです。私も含めて統合失調症の当事者は社会からの差別・偏見・汚名とあいまって、サポートする人が非常に少ないことがあげられます。肉親の兄弟・姉妹や両親までもが家族の精神障碍者を病院に入院させっぱなしで放っています。家族の中に精神障碍者がいると世間体が悪いのかもしれません。面倒なのかもしれません。社会的入院患者が現在、7万人くらいいますがこの人達は、社会でサポートしてくれる人達がいれば退院できます。そして、適当なサポートがあれば、社会で自立生活ができるようになります。私たちにも健全者と同じように社会の中で生活をすることができます。皆さんのサポートがあれば、少しずつ社会生活・社会参画ができるようになります。どうかどうか私たちに同年代と同じ社会生活が出来るようにサポートしてください。調子が毎日変わっていますが、私たちが出来ることは行います。どうか宜しく御願いします。

 私は、統合失調症を発病してからこの30年間を無為な時間とは考えていません。私は、平成13年から下関で生活しています。見ず知らずの地で一からやり直して10年目になりました。ある意味私には30年間が必要だったのかもしれません。私は、ゆっくり確実に生活技術を身につけていきました。最初に身につけたのはドラッグ管理とお金の管理です。下関に来るまで、全くお金の管理は出来ませんでした。しかし、毎週の小遣いを決めて貯金が増えていくのが楽しみでした。今は、全ての生活に必要なお金を、出納帳にまとめて妻の分と私、二人の共同生活の出納帳を管理しています。

 このように私には、援護寮ヒエダで一人暮らしの自立生活が出来るように生活技術を訓練して身につけました。CIL下関で勤務して9年目を迎えます。上司、同僚の細かな配慮で、何とか仕事を続けています。今の生活が送れるのは、私にはサプライズです。下関で巡り合った皆さんの御蔭で生活しています。仕事に、遣り甲斐と誇りと責任を持って頑張っています。私の今の自分を10年前の自分が見ていたならビックリしてしまうでしょう。それこそまさにサプライズです。

 

 

【編集後記】

 私は自分の人生を40歳過ぎてからやり直ししています。そして、薬の助けも借りて、自分の残存した症状に、向き合い、対処して生活しています。私はこのメンタルにゅーすヒエダを何故始めたのかと言うと、病気や障碍が自分の人生のバリアになっている私や皆さんに私が勉強してきたものをまとめ共有したいと思ったからです。私のこの人生は前に前に進んでいます。時々止まったり、後退したり、しかし、前に前に遅遅とした速度ですが進んでいます。皆さんも、あわてることはありません。人生は競争ではありません。皆が自分の道をしっかりと噛み締めて、様々な速度でいろんな道を味わって歩いているのです。貧乏なとき,かつがつ生活するとき、人並みにパートナーと生活するとき、私は、大きな夢は持ちません。少しずつ、あせらず・がんばらず・むりしないで物事を投げ出さないで生活しております。私は、これからも仲間の皆さんのためにメンタルにゅーすヒエダの編集を続けていこうと思います。これからも、皆さん、どうかよろしく御願いします。

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