精神科病院では、患者の入退院を回転ドア症候群ということが言われて長く久しい問題があります。患者の多くが退院すると、昼夜逆転して生活リズムが乱れて、服薬しなくなり調子を崩して、入退院を繰り返しています。
私は援護寮ヒエダに来て、社会復帰のために、通院、対人関係、生活技術(調理・ドラッグ管理・金銭管理など)など一人暮らしに必要なことを3年間かけてゆっくり身につけていきました。いろいろ、生活技術の指導を受けながら、興味本位に統合失調症の勉強を知らず知らずのうちに始めていました。援護寮に入寮してから、すぐに精神関係のニュースレター「援護寮ヒエダ新聞」を編集し始めましたので精神関係のことを必死に勉強しましたね。あの頃、精神病への知的好奇心もありましたので、苦しいと言うより、楽しかったですね。多分、「病識」という言葉を下関で使い始めたのは、私が当事者として最初かもしれません。「入退院を2、3回繰り返せば、普通はどうして自分は調子が悪くなって入院してしまうのだろうと考え始めます。そして、病識がつき始めます。」と精神関係の本に書いてありました。
また、援護寮のように当事者に配慮した環境を与えて、当事者達に働きかければ病識を身につける当事者もいました。ここでは、当事者に病識を働きかける、また、適当な時期に少しずつサポートしながら当事者が病気のことを考えさせる施設なのだと、今私はそう思います。当事者が自らエンパワメントすること、当事者が自ら自己決定・自己実現・自己責任をとることにより、自立生活に繋げていくことが大切だと思います。
それでは、病識を身につける(働きかける)ことについて、私が考え実行したことをお話します。
1.
自分の状態が悪くなるとどうなるか
不眠・多動多弁
いつもと違う(言葉で言い表せないが・・・)
生活への影響(身づくろい、ひきこもり)
周りの人に聞いてみる
自分で(本人に)振り返ってもらう
2.
病気について知る
通院
服薬(自分の服用している薬について知る)
病気の症状と副作用の症状
3.
病気や障害への対処法を身に付ける
安静にする
横になる
散歩
音楽を聞く
4.
生活
睡眠・食事
規則正しい生活サイクル
身づくろい
対人関係のとり方
病識の働きかけ方
病気の受容段階〜否認→怒り→諦め→受容
タイミング〜性格、症状の度合いで小出しに、本人の気になることから気付かせる
会話術〜言葉の窓口、入り口広く、キッカケ、餌やり、におわせる
目覚めのキッカケ〜生活のしづらさ
時間をかけてゆっくり働きかける
病識トレーニング〜その人その人に色々な働きかけがある
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【編集後記】
私は、43歳過ぎるまで自分の病気や障碍のことを勉強することをしなかったです。病気や障碍を知るには本屋に行けば適当な書物があるのに、なぜ勉強しなかったのかと、今ではそう思います。援護寮で精神関係の本を事務所の中で見つけて、「その本を貸してください。」と言うと、すぐに貸してくれました。本屋で並べてあるような本なのでとか何とか言っていました。少しずつ、ゆっくり勉強しました。私の疑問にさっと光が差し込むように、答えが分かってきました。そうすると、ますます知的好奇心が湧いてきました。
ある程度、本を読み綿が水を吸い込むように理解してくると、私は、何らかの形で私が理解したことを、仲間(peer)に伝えたいと思い始めました。そうだ、援護寮の新聞を編集して、仲間に伝えればいいんだと思いました。それで、援護寮の施設長に何故新聞を出したいのか話をして、新聞発行(「援護寮ヒエダ新聞」)の許可を貰いました。その時が、今から10年前のことでした。その後、私が自立生活を始めて、現在、編集している「メンタルにゅーすヒエダ」は66号になりました。
私の活動は、CIL下関の活動の中に精神の当事者のピアサポートを「メンタルにゅーすヒエダ」と言うニュースレターで現在進行形で進んでいます。「援護寮ヒエダ新聞」から、「メンタルにゅーすヒエダ」まで10年間くらいニュースレターは続いています。皆さんが何らかの形で、冊子(「精神障碍者自立生活マニュアル」)やホームページ(「メンタルにゅーすヒエダ」)で見ることができるようになりました。いつでもインターネットで「メンタルにゅーすヒエダ」と検索をかければ見つかります。興味が湧きましたら、お暇なときに目を通してください。どうか宜しく御願いします。
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