メンタルにゅーすVol.71

 

メンタルにゅーすヒエダ

 

メンタル管理

(病気や障碍に対処した生活)

2010年  Vol.71

CIL(自立生活センター)下関発行

ピア・ハート下関 編集 SAM

Tel(083)-263-2687

FAX(083)-263-2688

E-mail  s-cil@feel.ocn.ne.jp

URL  http://members.jcom.home.ne.jp/s-cil/

 私が、病気と障碍に対処して生活できるようになったのは何時からだろうかと考えます。

多分私は、下関の援護寮に入寮してから精神関係のことを勉強して、病気や障碍の対処法を身につけていくに従い、メンタル管理ができるようになったのだと思います。メンタル管理は自分が病気や障碍に振り回されないように対処した生活をすることです。

山陽小野田市で生活していたときには、仕事は23日くらい、長くて5日くらい続くだけで仕事に行かなくなります。何故なのかとその頃通院していたHクリニックの主治医に聞いたことがあります。主治医は病気と障碍のせいで仕事に行かなくなったのですと私に話していました。仕事と統合失調症に何の関係があるのかその当時は分かりませんでした。

今、私は下関に住んで10年目、CIL下関で働いて9年目を迎えます。10年前は、社会復帰施設の援護寮から福祉工場に約2年働いて、CIL下関で週一回ボランティアをしていました。1年位して、CIL下関で精神の当事者職員の求人が安定所に出ていましたので、紹介状を安定所で貰い面接に臨みました。他に56人面接をしたそうです。私が、最終的に面接に合格して職員として採用になりました。上司のKさんに理由をきいてみますと、私が面接をした中で障碍が一番重度で、病気と障碍に対処して生活(メンタル管理)しているからだと教えてくれました。私は採用通知を貰ってから、仕事が続くか不安でした。また、以前のように25日ぐらいで3日坊主になりはしないかと心配でした。

 就職して、身体や精神を慣らしながら少しずつ勤務して週5日の完全就労(17時間)ができるように上司のKさんに4ヶ月の移行期間を御願いしました。今考えてみると、精神障碍者の職員を迎え入れるのは、Kさん・同僚には一大決心だったことと思います。

何はともあれ私は、病気と障碍を持っても、それらに対処して仕事・生活をしていければいいんだと考えていました。

私は、病気と障碍を持って何とか仕事を続けることが出来るように、精神病関係の勉強をしながら、毎月「援護寮ヒエダ新聞」を編集していました。病気と障碍を持ちながらメンタル管理をして仕事・生活をするのは大変でしたがボチボチ仕事を覚えていきました。色々苦難はありましたが、支援センター、援護寮の職員に支えられながら今の自分があります。有難い事です。

 幻聴・妄想が残存しながら仕事・生活するのは辛いです。これらは、私を非難する内容で責めさいなみます。何とか、対処して生活しています。特に幻聴は、私と馬が合わない人の声とそっくりでしたので不快でした。健全者は、そんな幻聴と分かっているのなら、無視すればいいじゃないかと思うかもしれません。そんなに簡単には上手くいきません。

今は、生活の音、実際にある人の声と幻聴の音・声の聞き分けは出来ます。一番簡単なのは、周りの人に、「今、人の声がするのだけど」と聞いてみればいいのです。私が、幻聴で不思議に思ったのは、長い時間続けて私のことを非難する人がいるはずはないと考えたことです。いくらなんでも他人の悪口を2時間も3時間も1日中続けて話す人はいないと思います。そう考えると、幻聴だと俯瞰した自分が私に教えてくれます。

 私が、物事を注意深く観察したり、考えたりするのは、むしろ癖になっています。

どうしたら幻聴と妄想に対処して、社会生活が出来るか、様々な精神関係の当事者の本を読みましたが、彼らの本には、様々な精神症状・副作用がどのように辛いかを周りの家族や友人・医療スタッフに分かってほしい、当事者に共感してほしいと言うだけで、実際にどのように病気の症状を自分自身対処すれば楽になると言うようなことが本に書いてないことが多いです。私は、この「メンタルにゅーす」で仲間の精神の当事者に、病気と障害の色々な対処の仕方、精神関係の様々な情報についてどのように考えているか伝えています。精神の当事者のQOL(生活の質)の向上に視点を置いて、編集していきたいです。

勿論、患者が病院を退院する前に「退院プログラム」として服薬・通院の大切さや、規則正しい生活、ADL(日常生活動作:洗顔、歯磨き、風呂、身づくろい等)の低下など、病気と障碍を持って生活する上で大切な事を患者に伝えていくことを考えて欲しいです。

 山口県には、3つのCIL(自立生活センター)があります。周南市・宇部市・下関市にそれぞれ自立生活センターがありますが精神の当事者職員がいるのは、CIL下関だけです。

全国のCIL120くらいありますが、精神の当事者職員は数えるほどしかいません。

私は、精神障碍では重度な当事者です。始終幻聴と妄想が症状としてあります。

自分がこんなに障碍が重度なのによく対処して仕事・社会生活をしていると我ながら不思議です。しかし、私は寛解しているとはいえません。多分、私は残存する幻聴と妄想がありますので不完全寛解状態なのだと思います。私は、40歳過ぎまで統合失調症について何も知らなかったです。この病気の正体・予後・病気と障碍の対処の仕方・制度等利用しながら生きていくことなど全て自分で勉強してきました。分からないことは、精神保健福祉士に教えてもらいました。私は、病院・施設スタッフのサポート、同じ精神障碍者のピア・サポートなどたくさんの人達に助けられながら、今私は何とか仕事・生活をしています。精神障碍者が仲間(ピア)の支援(サポート)が出来るわけないと思いますか?どうでしょう・・・・・?私は、ピアサポートを援護寮で受けてきました。だから、今私は自分自身のメンタル管理しながら、自分が会った仲間にピアサポートをしていきたいです。それが、私の仕事ですからね・・・・・

(*寛解〜火山で言うと噴火したときの状態の悪化したときから、寛ぎおさまった休火山の状態が寛解しているという。ただ、休火山なので、いつ爆発するかは分からないです。寛解状態を保つには服薬・通院が大切です。服薬・通院で再発のリスクが低くなります。

 

【編集後記】

 以前私は、自分勝手でわがままでした。自分さえよければいい、そう思っていました。

私が、今の仕事に巡り合ったのは、上司のKさんにあったことから始まります。彼は重度の身体障碍者です。同じ障碍者なのに、何故こんなに彼は、いきいきと生きることが出来るのだろうと不思議に思っていました。彼は強烈な個性で着々と前に進んでいます。私は彼がうらやましく思いました。私は、彼の元で彼のように、人に優しく自分に厳しく、福祉の仕事を続けていけたらなと思いました。そのためには、私自身の精神病のメンタル管理が必須になりました。特に、自分と同じ精神障碍者のサポートと障碍者運動の一矢でもと思いそれらを仕事にしています。ここ3年、精神の当事者の相談業務が増えてきました。以前は相談業務でアドバイスしてしまうことが多かったです。ここ1年は傾聴することができるようになりました。相談者は、普段、精神障碍者として、本心を見せないように振舞っていました。しかし、私が彼らの話を傾聴するようになって、彼らは本心を見せるようになりました。感情を出すことはいいことです。そして、私も彼らもストレスを水洗便所のように流して忘れてしまいます。

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